相続税及び贈与税の課税価額の基礎となる財産評価は、時価を基本としますが、その金額の算定には困難な場合も多々あります。
現金の場合、相続開始日における有高が財産評価となる意味において、これほど確実に時価を表している財産はありません。
預貯金等も同様ですが、時として既経過利息の計算等を伴う場合があり、残高証明だけでよいという訳にはいきません。
代表的な財産である土地等の場合、画地ごとにその形状・利用形態等個別性が強く、また相続開始日と言う時点からも、一つとして同じものがないと思われます。
もし、各種財産に指針となる基準がなければどうなるでしょうか、
個々の判断に任せれば恣意的に判断される危険性があり、かといって、第3者に、すべての財産の鑑定評価を依頼するのでしょうか、時間と費用、相当な労力を要します。これで必ず正解とも限りません。
そのため、財産の評価に関する統一的な定めとして、財産評価基本通達が公開されています。これには、時価の概念や評価方法が定められ、土地ほかにつきましては、毎年財産評価基準書が公表されているところです。
「財産評価基準書」のなかに、土地に関する路線価図があり、よく知られているところです。(平成29年分は、平成29年7月公表)
この「評価通達」によれば、例えば、土地については、路線価図を基に、路線価に地積を乗じ土地の評価額を求めることになり、通常、様式として土地及び土地の上に存する権利の評価明細書を使用し評価することになります。
●土地評価明細書(平成30年分以降用)・●土地評価明細書(平成16年分以降用)
「路線価図」に基に計算すると、相続発生の日に関係なく、一年中同じ評価となります。(倍率表を適用する土地の評価には言及しておりません。)
建物であれば、固定資産評価証明書を入手し、「自用」か「貸付」かの別により評価します。
有価証券のうち、非上場株式等であれば、取引相場のない株式(出資)の評価明細書を使用し、上場株式であれば、上場株式の評価明細書を使用し、評価することになります。
●取引相場のない株式評価明細書(平成30年1月分以降用)はこちらから
ほかの財産評価についての記述は、紙幅の関係で割愛させて頂きます。
(個々の財産の評価のため、各種「評価の明細書」が用意されています。)
以上のように個々の財産を評価し、
相続税申告書第11表「相続税がかかる財産の明細書」に相続財産の明細を記入していくことになりますが、記載要領は、下記第11表の記載要領を参照願います。
また、実務で使用される、これら各財産についての評価の明細書が用意されていますが、一部を下記に掲載しております。順次掲載を行っていく予定です。
当事務所では、可能な限り事務省力化のため、自動計算を行えるようエクセルファイルを作成しておりますが、なにぶん、作成には時間がかかりますのでご理解願います。
イメージ的には、下記の流れように作業が進んでいくことになろうかと思われますが、全種類の財産用に評価明細書が用意されている訳ではありません。
生命保険金等などは、第11表の前に非課税金額を求めるため、他の第9表を経由・寄り道していくものもあります。
各種財産 ⇒ 各評価の明細書 ⇒ 申告書第11表
相続税申告書第11表の取得した財産の種類、細目、利用区分、銘柄等の記載要領
種類 | 細目 | 利用区分・銘柄等 | |
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土地・(土地の上に存する権利を含みます。) | 田 | 自用地、貸付地、賃借権(耕作権)、永小作権の別 | |
畑 | |||
宅地 | 自用地(事業用、居住用、その他)、貸宅地、貸家建付地、借地権(事業用、居住用、その他)などの別 | ||
山林 | 普通山林、保安林の別(これらの山林の地上権又は賃借権であるときは、その旨) | ||
その他の土地 | 原野、牧場、池沼、鉱泉地、雑種地の別(これらの土地の地上権、賃借権、温泉権又は引湯権であるときは、その旨) | ||
家屋 | 家屋(構造・用途)、構築物 | 家屋については自用家屋、貸家の別、構築物については駐車場、養魚池、広告塔などの別 | |
事業(農業)用財産 | 機械、器具、農機具、その他の減価償却資産 | 機械、器具、農機具、自動車、船舶などについてはその名称と年式、牛馬等についてはその用途と年齢、果樹についてはその樹種と樹齢、営業権についてはその事業の種目と商号など | |
商品、製品、半製品、原材料、農産物等 | 商品、製品、半製品、原材料、農産物等の別に、その合計額を「価額」欄に記入し、それらの明細は、適宜の用紙に記載して添付してください。 | ||
売掛金 | |||
その他の財産 | 電話加入権、受取手形、その他その財産の名称。なお、電話加入権については、その加入局と電話番号 | ||
有価証券 | 特定同族会社の株式、出資 | 配当還元方式によったもの | その銘柄 ※「特定同族会社」については、下の(注)を参照ください。 |
その他の方式によったもの | |||
上記以外の株式、出資 | |||
公債社債 | |||
証券投資信託、貸付信託の受益証券 | |||
現金、預貯金等 | 現金、普通預金、当座預金、定期預金、通常郵便貯金、定額郵便貯金、定期積金、金銭信託などの別 | ||
家庭用財産 | その名称と銘柄 | ||
その他の財産(利益) | 生命保険金等 | ||
退職手当金等 | |||
立木 | その樹種と樹齢(保安林であるときは、その旨) | ||
その他 | 1 事業に関係のない自動車、特許権、著作権、電話加入権、貸付金、未収配当金、未収家賃、書画・骨とうなどの別 2 自動車についてはその名称と年式、電話加入権についてはその加入局と電話番号、書画・骨とうなどについてはその名称と作者名など 3 相続や遺贈によって取得したものとみなされる財産(生命保険金等及び退職手当金等を除きます。)については、その財産(利益)の内容 |
(注)「特定同族会社」とは、相続や遺贈によって財産を取得した人及びその親族その他の特別関係者(相続税法施行令第31条第1項に掲げる者をいいます。)の有する株式の数又は出資の金額が、その会社の発行済株式の総数又は出資の総額の50%超を占めている非上場会社をいいます。
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第10表 退職手当金などの明細書 | 平成21年4月分以降用 |
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第11表 相続税がかかる財産の明細書 | 平成21年4月分以降用 |