新減価償却制度による固定資産台帳 平成19年度改正対応 大阪府高槻市の松本寿一税理士事務所

新減価償却制度による固定資産台帳

固定資産台帳とは、業務用の減価償却資産や繰延資産について、個々に口座を設け、資産の取得や異動に関する事項を記入しておく帳簿で、事業者は必ず備え付けておくべき帳簿となります。

平成19年度税制改正により、減価償却計算が大きく変わり、
平成19年4月1日以後に取得された資産については、償却率の変更や償却可能限度額及び残存価額が廃止され1円(備忘価額)まで償却が可能となり、また、同日より前に取得し、償却計算を行っている資産についても影響があるところです。

この税制改正により、現に改正前に取得した資産及び改正後に取得した資産を有する場合、固定資産の管理は従前より煩雑となったことは否めません。


(注)資産の耐用年数は適切に判断されますように。ときには誤りが散見されます。
重量鉄骨・軽量鉄骨の区別がなされていない、平成10年4月改正前の耐用年数を適用しているなど。

所得税は強制償却と言われ、法人税のように償却限度内で任意の金額のみを必要経費としても、償却不足による認容はありえません。
来年のために本年の償却費は少なくする等任意での必要経費とすることはできません。
未償却残高は減り続け、救済措置は「更正の請求」しか残りません。


下記各表は、当事務所作成 固定資産台帳エクセルファイルの写しであります。
薄い黄色の塗つぶし部分に必要事項の入力を行いますと、法定耐用年数までの各年の償却額が自動計算されます。

下記ファイルは写しでありますので、ホームページ上では動作致しません。また、顧問先配布用のため販売やダウンロード等は行っておりません。

 この固定資産台帳エクセルファイルは次の6つのシートから構成されています。

  1. 平成19年4月1日以後に取得した新定額法適用資産用
  2. 平成19年3月31日以前に取得した旧定額法適用資産用
  3. 平成19年4月1日以後に取得した新定率法適用資産用
  4. 平成19年3月31日以前に取得した旧定率法適用資産用
  5. 別表10(平成19年改正後の耐用年数に応じた償却率等)
  6. 別表9(平成19年改正前の耐用年数に応じた償却率)

新・旧と表現しておりますが、便宜的に違いを表現するために表記しております。

いずれの計算シートも、改正税法に対応したもので、
「1」及び「3」においては、平成19年4月1日に取得した資産を残存価額1円(備忘価額)まで償却計算が行え、
「2」及び「2」においては、同日以前に取得し、取得価額の95%相当額(改正前償却可能限度額)に達している資産を残存価額1円(備忘価額)まで償却計算を行えるようにしたものです。


●適用時期 この適用時期には注意が必要です。19年4月1日以後開始する事業年度から。個人の方の所得税は平成20年分以降となります。

(注)⑦事業専用割合の欄は取得時点でその割合(業務に供している部分の金額)が判明している場合は、直接取得価額欄にその金額の記載を行い、割合は100%とする方法も可能かと考えます。
個人の方は、業務と家事の併用ということもあり、上記のような処理も可能と言うことで、法人の方は基本的に取得する資産は全て業務の用に供するはずです。

【事例】4月1日以後事業開始の法人で、新定額法・旧定額法・新定率法・旧定率法のいずれも同一の資産

(正確には「新」は表現されず定額法・定率法ですが、違いを表現するためこのような表記にしております)
①及び③は、平成19年4月1日に取得価額1,000,000円、耐用年数10年の機械装置を取得し、業務の用に供したケース。
②及び④は、平成8年か平成7年の4月1日に取得価額1,000,000円、耐用年数10年の機械装置を取得し、業務の用に供したケース。(税制改正前の事業年度で償却可能限度額に達している場合を想定)

表枠外にある元号年は個人の方が年分、法人の方は年度と読み替えて下さい。

1 新定額法の場合

耐用年数10年の償却率0.100にて償却を行いますが、最終年は残存価額1円を残す必要がありますので下記のような計算となります。

新定額法による固定資産台帳

2 旧定額法の場合

平成18年度にて償却可能限度額の95%に達していますので、翌事業年度から5年間で残存価額1円まで償却を行います。

旧定額法による固定資産台帳

3 新定率法の場合

この償却方法の計算は少々複雑で「償却保障額」という新しい文言が出てまいります。
紙幅の関係で詳細は割愛させて頂きますが、このまま期首未償却残高に償却率を乗じていくと 到底10年間で償却は終了しません。

(改正前償却計算でも旧定率法は95%の償却可能限度額 に達するまで、最短で13年も要していました)
そこで、上記の金額を用い、最低限の償却額を容認し耐用年数内に収まるよう工夫されています。
このケースでは8年目(平成26年)以降に調整されていくようになります。

新旧の償却額の差異は改正減価償却制度中段の設例を参照ください

新定率法による固定資産台帳

4 旧定率法の場合

平成18年度にて償却可能限度額の95%に達していますので、翌事業年度から5年間で残存価額1円まで償却を行います。

旧定率法による減価償却費

参考

下記のグラフは、各償却方法を適用した場合の残存価額(各年の償却額控除後の金額)の推移であります。
新定額法及び新定率法ともに曲線の違いこそあれ、10年後には残存価額1円まで償却することになります。
旧定額法及び旧定率法は、95%の償却可能限度額に達した後から5年間で残存価額1円まで償却を行います。
償却計算が認められたことは朗報でありますが、固定資産の管理はやはり煩雑でしょう。

新旧減価償却計算の残存価額の推移