平成24年税制改正 所得税関係 大阪府高槻市の松本寿一税理士事務所

平成24年税制改正 所得税関係

下記は、国税庁「平成24年分 所得税の改正のあらまし」を基に主な改正事項を抜粋し記述しております。

 この「改正のあらまし」は、次の目次となります。
├1 平成24年分所得税の主な改正事項
├2 平成22年度の改正事項のうち、平成24年分の所得税から適用される主なもの
├3 平成23年度の改正事項のうち、平成24年分の所得税から適用される主なもの
├4 平成24年度の改正事項のうち、平成25年分の所得税から適用される主なもの
└5 東日本大震災の復興の係る措置

1 平成24年分所得税の主な改正事項

1 住宅税制の改正

(1) 住宅借入金等特別控除について、都市の低炭素化の促進に関する法律の制定に伴い、認定低炭素住宅(住宅の用に供する同法に規定する低炭素建築物に該当する家屋で一定のものをいいます。以下同じです。)の新築又は建築後使用されたことのない認定低炭素住宅の取得をして、平成24年又は平成25年に居住の用に供した場合における住宅借入金等の年末残高の限度額及び控除率が、次のとおりとされました。

居住年 控除期間 住宅借入金等の年末残高の限度額 控除率
平成24年 10年間 4,000万円 1.0%
平成25年 10年間 3,000万円 1.0%

(適用関係) この改正は、都市の低炭素化の促進に関する法律(平成24年4月1日現在未成立)の施行の日以後に認定低炭素住宅を居住の用に供した場合について適用されます。

(2) 認定長期優良住宅新築等特別税額控除について、税額控除限度額が50万円(改正前100万円)に引き下げられた上、その適用期限が平成25年12月31日まで2年延長されました。

(適用関係) この改正は、平成24年1月1日以後に認定長期優良住宅を居住の用に供する場合について適用されます。

2 医療費控除の改正

医療費控除の対象範囲に、介護福祉士による喀痰(かくたん)吸引等及び認定特定行為業務従事者(一定の研修を受けた介護職員等)による特定行為に係る費用の自己負担分が加えられました。

(適用関係) この改正は、平成24年4月1日以後に支払う医療費について適用されます。

3 金融証券税制の改正

(1) 特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例について、その年中に取引(譲渡・配当等の受入れ)がなかった特定口座については、その特定口座を開設していた居住者又は国内に恒久的施設を有する非居住者からの請求がある場合を除き、その特定口座を開設されていた金融商品取引業者等は特定口座年間取引報告書の交付を要しないこととされました。

(適用関係) この改正は、平成24年以後の各年において金融商品取引業者等に開設されていた特定口座に係る特定口座年間取引報告書について適用されます。

(2) 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除及び上場株式等の譲渡をした場合の譲渡所得等に係る10%軽減税率(所得税:7%、住民税:3%)の適用対象となる上場株式等の譲渡の範囲に、信託会社(信託業務を営む金融機関を含みます。)の国内にある営業所に信託されている上場株式等の譲渡で、その営業所を通じて、外国証券業者への売委託により行うもの又は外国証券業者に対して行うものが加えられました。

(適用関係) この改正は、平成24年4月1日以後に行う上場株式等の譲渡について適用されます。

(3) 特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等及び特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等について、適用対象となる特定株式の範囲に、地域再生法に規定する認定地域再生計画に記載されている一定の特定地域再生事業を行う株式会社(地域再生法の一部を改正する法律の施行の日から平成26年3月31日までの間に地域再生法第16条の確認を受けたものに限ります。)であって中小企業者に該当するものにより発行される株式で、その確認を受けた日から同日以後3年を経過する日までの間に発行されるものが加えられました。

(適用関係) この改正は、地域再生法の一部を改正する法律(平成24年4月1日現在未成立)の施行の日から適用されます。

4 事業所得関係

(2) 中小企業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例の適用期限が平成26年3月31日まで2年延長されました。

5 譲渡所得関係

(1) 特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例について、譲渡資産の譲渡対価に係る要件が1.5億円(改正前:2億円)以下とされた上、その適用期限が平成25年12月31日まで2年延長されました。

(適用関係) この改正は、平成24年1月1日以後に行う居住用財産の譲渡について適用されます。

(2) 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除及び特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除について、その適用期限が平成25年12月31日まで2年延長されました。

(3) 特定事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例について、国内にある長期所有(譲渡の日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超えるもの)の土地、建物等から国内にある土地、建物、機械装置等への買換えについて、買換資産の土地等の範囲が、事務所等の一定の施設の敷地の用又は一定の駐車場の用に供されるもので、その面積が300㎡以上のものに限定された上、その適用期限が平成26年12月31日まで3年延長されました。

(適用関係) この改正は、平成24年1月1日以後に譲渡資産の譲渡をし、かつ、買換資産の取得をする場合におけるその譲渡について適用され、同日前に譲渡資産の譲渡をした場合及び同日以後に譲渡資産の譲渡をし、かつ、同日前に買換資産の取得をした場合におけるこれらの譲渡については、従前どおりとされます。

2 平成22年度の改正事項のうち、平成24年分の所得税から適用される主なもの

1 生命保険料控除の改組

(1) 生命保険料控除が改組され、次の(1)から(3)までによる各保険料控除の合計適用限度額が12万円とされました。

(1)平成24年1月1日以後に締結した保険契約等に係る控除
イ 平成24年1月1日以後に生命保険会社又は損害保険会社等と締結した保険契約等(以下「新契約」といいます。)のうち介護(費用)保障又は医療(費用)保障を内容とする主契約又は特約に係る支払保険料等(以下「介護医療保険料」といいます。)について、介護医療保険料控除(適用限度額4万円)が設けられました。
ロ 新契約に係る一般生命保険料控除及び個人年金保険料控除の適用限度額は、それぞれ4万円とされました。
ハ 上記イ及びロの各保険料控除の控除額の計算は次のとおりとされました。

年間の支払保険料等 控除額
20,000円以下 支払保険料等の全額
20,000円超40,000円以下 支払保険料等× 1/2 + 10,000円
40,000円超80,000円以下 支払保険料等× 1/4 + 20,000円
80,000円超 一律40,000円

ニ 新契約については、主契約又は特約それぞれの保障内容に応じ、その保険契約等に係る支払保険料等を各保険料控除に適用することとされました。

(2)平成23年12月31日以前に締結した保険契約等に係る控除
平成23年12月31日以前に生命保険会社又は損害保険会社等と締結した保険契約等(以下「旧契約」といいます。)については、従前の一般生命保険料控除及び個人年金保険料控除(それぞれ適用限度額5万円)が適用され、控除額の計算は次のとおりとされました。

年間の支払保険料等 控除額
25,000円以下 支払保険料等の全額
25,000円超50,000円以下 支払保険料等× 1/2 + 12,500円
50,000円超100,000円以下 支払保険料等× 1/4 + 25,000円
100,000円超 一律50,000円

(3)新契約と旧契約の双方について保険料控除の適用を受ける場合の控除額の計算新契約と旧契約の双方について一般生命保険料控除又は個人年金保険料控除の適用を受ける場合には、上記(1)ロ及び(2)にかかわらず、一般生命保険料控除又は個人年金保険料控除の控除額は、それぞれ次に掲げる金額の合計額(上限4万円)とされました。

イ 新契約の支払保険料等につき、上記(1)ハの計算式により計算した金額
ロ 旧契約の支払保険料等につき、上記(2)の計算式により計算した金額 。

(適用関係) この改正は、平成24年4月1日以後の所得税について適用されます。

3 平成23年度の改正事項のうち、平成24年分の所得税から適用される主なもの

2 減価償却の改正

(1) 減価償却資産の定率法の改正・・・こちらの改正については、改正減価償却制度 平成23年度税制改正にも掲載しております。

イ 定率法の償却率の改正
平成24年4月1日以後に取得する減価償却資産の定率法の償却率について、定額法の償却率(1/耐用年数)を2.0倍した割合(改正前:2.5倍した割合)とされました。

ロ 経過措置
(イ)平成24年分においてその有する減価償却資産につき定率法を選定している場合において、平成24年4月1日から同年12月31日までの間に減価償却資産の取得をするときは、その減価償却資産については平成24年3月31日以前に取得したものとみなして、改正前の償却率による定率法により償却費の額を計算することができます。
(ロ)平成24年分においてその有する減価償却資産につき定率法を選定している場合において、平成24年分の確定申告期限までに届出書を納税地の所轄税務署長に提出したときは、平成24年分又は平成25年分以後の各年分において改正後の償却率により償却費の計算等を行うことができます。
(注)適用を受ける最初の年分において、調整前償却額が償却保証額に満たない減価償却資産については、この特例を受けることはできません。

(2) 資本的支出をした場合の取得価額の特例の改正

定率法を採用している減価償却資産に資本的支出を行った場合に、その支出をした日の属する年の翌年1月1日において減価償却資産の取得価額と当該資本的支出により取得したものとされた減価償却資産の取得価額との合計額を取得価額等として一の減価償却資産を取得したものとすることができる特例について、平成24年3月31日以前に取得した減価償却資産と平成24年4月1日以後にした資本的支出により取得をしたものとされた減価償却資産とを一の減価償却資産とすることはできないこととされました。

4 先物取引に係る雑所得等の課税の特例等の改正

先物取引に係る雑所得等の課税の特例及び先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除の適用対象に、次に掲げる取引に係る雑所得等が加えられました

(1)商品先物取引法第2条第14項第1号から第5号までに掲げる取引で同法に規定する店頭商品デリバティブ取引の差金等決済
(2)金融商品取引法第2条第22項第1号から第4号までに掲げる取引で同法に規定する店頭デリバティブ取引の差金等決済
(3)金融商品取引所に上場されていない金融商品取引法第2条第1項第19号に掲げる有価証券に表示される権利の行使若しくは放棄又はその有価証券の譲渡

(適用関係)この改正は、先物取引に係る差金等決済で平成24年1月1日以後に行われるものについて適用されます。

6 金地金等の譲渡の対価に係る支払調書の創設

先物取引に係る雑所得等の課税の特例及び先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除の適用対象に、次に掲げる取引に係る雑所得等が加えられました

居住者又は国内に恒久的施設を有する非居住者に対し国内において、金地金又は白金地金(金貨及び白金貨を含みます。以下「金地金等」といいます。)の譲渡の対価の支払をする者(金地金等の売買を業として行う者に限ります。)は、その支払金額等を記載した支払調書を、その支払の確定した日の属する月の翌月末日までに、その支払をする者の所在地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされました(所法224の6、225①十四)。
(注)同一人に対するその金地金等の譲渡の対価の支払金額が200万円以下である場合には、その金地金等の譲渡の対価に係る支払調書の提出は要しません。

(適用関係)この改正は、平成24年1月1日以後に行われる金地金等の譲渡について適用されます。

4 平成24年度の改正事項のうち、平成25年分の所得税から適用される主なもの

1 給与所得控除の改正

(1) その年中の給与等の収入金額が1,500万円を超える場合の給与所得控除額について、245万円の上限が設けられました。

(適用関係)この改正は、平成25年分以後の所得税について適用されます。

(2)給与所得控除の改正に伴い、給与所得の源泉徴収税額表(月額表(所法別表第二)及び日額表(所法別表第三))、賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(所法別表第四)及び年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表(所法別表第五)などについて所要の改正が行われました。

(適用関係)この改正は、平成25年1月1日以後に支払うべき給与等について適用されます。

3 退職所得課税の改正

(1) その年中の退職手当等のうち、特定役員退職手当等に係る退職所得の金額は、退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額(改正前残額の2分の1)とされました。

(注1)「特定役員退職手当等」とは、退職手当等のうち、役員等勤続年数が5年以下である者が、退職手当等の支払者からその役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるものをいいます。
(注2)「役員等勤続年数」は、退職手当等に係る勤続期間のうち、例えば、その退職手当等の支払を受ける者がその支払者の下において退職の日まで引き続き勤務した場合には、その引き続き勤務した期間のうち、役員等(次のイからハに掲げる者をいいます。)として勤務した期間をいいます。
イ法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で法人の経営に従事している一定の者
ロ国会議員及び地方公共団体の議会の議員
ハ国家公務員及び地方公務員

(適用関係)この改正は、平成25年分以後の所得税について適用されます。

5 東日本大震災の復興に係る措置

2 復興特別所得税の創設

東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法が公布され、「復興特別所得税」が創設されました。
これにより平成25年から平成49年までの各年分の確定申告については、所得税及び復興特別所得税を併せて申告・納付することになります。なお、給与所得者の方は、平成25年1月1日以降に支払を受ける給与等から所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されることとなります。