所得税の青色申告制度 その特典内容と不動産所得の場合の制限事項 松本寿一税理士事務所

青色申告制度の特典

青色申告と青色申告特別控除

青色申告は、事業所得や不動産所得又は山林所得を有する方が、所轄税務署に「所得者の青色申告承認申請書」を提出し、承認を受けることにより青色申告が行えることになります。
 従前は、確定申告書の色により区別ができましたが、現在においては○表示はしますが、申告書の色での判別はできません。

青色申告には、主に次のような特典があり、青色申告ではない場合(白色申告)に比べ節税となることに違いはないと思われます。

青色申告特別控除 10万円若しくは65万円、65万円の特別控除を受けるには、正規の簿記の原則(複式簿記)により日々の取引を正確に記帳することが前提となります。

専従者給与 白色申告の控除制度と違い、適正な金額であれば上限はありません。

純損失の繰越控除と繰戻し 事業等で生じた損失を以後3年間に渡り繰越すことができ、また1年前に遡りその損失を繰戻すことができます。

不動産所得者の方も青色申告を選択し、節税に取組んで頂きたいところです。が、時としてトラブルとなるケースがあります。
 不動産所得者の場合、貸付規模により上記に掲げた特典のうち①及び②が制限がされており、実際適用を受けることができません。

青色申告の特典の制限

法令では、不動産所得に関し貸付規模(事業的規模)により異なる取扱を定めており、そして、その判定基準は次の基本通達に示されております。

事業的規模でなければ事業専従者給与等が認められず、65万円青色申告特別控除も控除不可となってしまいます。また資産損失の処理や貸倒損失の処理についても取扱は異なります。

下記通達のとおり、まず実質基準があり、そして形式基準ということになります。
 貸付先が1件、収入金もさほど多くはないような場合、仮に複式にて記帳されていても、青色申告特別控除は65万円適用不可、10万円のみ控除可。専従者給与も支給不可となってしまいます。

所得税基本通達 26-9(建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定)
 建物の貸付けが不動産所得を生ずべき事業として行われているかどうかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより判定すべきであるが、次に掲げる事実のいずれか一に該当する場合又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみてこれらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。

(1) 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。
 (2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

青色申告の専従者給与と白色申告の専従者控除

青色申告の特典のである専従者給与と白色申告の専従者控除の差異を下記に掲載しております。届出の提出が必要となりますが、金額にして大きく異なることになりますので検討の余地はあると思われます。
 一定額の給与支払いついては、給与から所得税を源泉徴収する事務並びに年末調整事務が必要となります。
(ただし、配偶者控除や扶養控除との選択であり重複して受けることはできません。)

青色専従者給与と白色専従者控除
青色申告者の専従者給与 「所得税の青色申告承認申請書」を提出されている方 白色申告者の専従者控除
親族、年齢 生計を一にする親族で15歳以上 同左
従事状況 年を通じ6ヶ月を超える期間専らその事業に従事することが必要。ただし、事業が年の中途での開業・廃業や親族側が病気療養などで6ヶ月を超えない場合でも、従事可能期間の1/2を超える期間従事できれば可能。 1年のうち6ヶ月を越える期間その事業に従事することが必要。
事前届出 専従者となるべき者の氏名・給与の金額等届出が必要。
「青色事業専従者給与に関する届出(変更届出)書」
必要経費算入額 適正な給与であること。
事前届出金額の範囲内で労務の対価として適切であるかどうか、経験年数・職務内容や世間相場、経営者の支払能力などから検討する必要があります。
○配偶者が専従者86万円
○配偶者以外の専従者1人当たり50万円
ただし、専従者控除を差引前の金額を1+専従者の数で割った金額が上限となります。
支給を受けた親族側は 給与所得の収入金額に算入されます。 同左