消費税の控除対象外消費税額等の取扱い 大阪府高槻市の松本寿一税理士事務所

控除対象外消費税額等とは

税抜経理方式」を採用している場合、課税仕入等の税額として、課税標準に係る消費税額から控除できるのは、課税売上割合が95%以上の場合に限られ、これ以外の場合は、課税売上に対応する部分の金額のみ控除することになります。

この結果、控除できない税額が生じます。つまり経理内に滞留する消費税が生じることとなります。
これが「控除対象外消費税額等」であります。

非課税売上の多い業種、例えば医業の方・居住用不動産賃貸業や非課税資産土地等の売却がある方など。

この控除対象とされない「控除対象外消費税額等」の経理処理は、法人税と所得税は若干の差異はありますが、下記のように取り扱われます。

なお、税込経理の場合は、記帳・決算上の修正や調整は不要となります。(取引が消費税等を含んだところで経理されているため)

課税売上割合

所得税及び法人税関連様式

この規定を計算するために用意されている様式
所得税(個人課税)の場合 資産に係る控除対象外消費税額等の必要経費算入に関する明細書(平30年分)
法人税の場合 資産に係る控除対象外消費税額等の損金算入に関する明細書(平27年度)

控除対象外消費税額等の法人税・所得税の処理

控除対象外消費税額等が、1 資産に係るものであるか2 資産に係るもの以外かで区分し、

1 資産に係るものは、⑴から⑶のいずれかの方法によって、損金の額(法人税)又は必要経費(所得税)に算入します。

⑴ その資産の取得価額に算入し、償却費として損金の額に算入します。

⑵ 次に該当する場合は、法人税では、損金経理を要件としてその事業年度の損金の額に算入し、また、所得税では、全額をその年分の必要経費に算入します。

① その事業年度又は年分の課税売上割合が80%以上であること。
② 棚卸資産に係る控除対象外消費税額等であること。
③ 一の資産に係る控除対象外消費税額等が20万円未満であること。

⑶ 上記に該当しない場合には、「繰延消費税額等」として資産計上し、5年以上の期間で償却することとし、両税の処理方法は次のとおり。


繰延消費税額等の取扱い

⑴ 法人税
 資産に係る控除対象外消費税等×その事業年度の月数÷60 
で求められる金額の範囲内で、その法人が損金経理した金額を損金の額に算入します。
 なお、その資産を取得した事業年度においては、上記によって計算した金額の2分の1に相当する金額の範囲内で、その法人が損金経理した金額を損金の額に算入します。

⑵ 所得税
  資産に係る控除対象外消費税等×その年の業務を行っていた期間の月数÷60
で求められる金額を必要経費の額に算入します。
 なお、その資産を取得した年分においては、上記によって計算した金額の2分の1に相当する金額を必要経費の額に算入します。


2 資産に係るもの以外の控除対象外消費税額等である場合

⑴ 法人税
 全額をその事業年度の損金の額に算入します。
 ただし、交際費等に係る控除対象外消費税額等に相当する金額は交際費等の額として、交際費等の損金不算入額を計算します。

⑵ 所得税
 全額をその年分の必要経費の額に算入します。


また、当事務所では「控除対象外消費税等の計算」に関する自動計算ファイル(改訂版)を用意しております。

このファイルは「控除対象外消費税額等」が生じた場合、
 ①当年の実際納付税額(還付税額)と
 ②繰延消費税額等の金額及び雑損(損金)の金額を求め
 ③仕訳(振替伝票の作成)
 を表示するよう作成しております。また、修正申告等異動が生じた場合にも対応するよう作成しております。

特に所得税(個人)では、所得を区分するという税法の規定から、事業所得と不動産所得と併有する場合など、両所得間へいかなる金額を配分するかにも対応させております。

次のようなケースに対応し、下記のフォーム(抜粋)から入力を行いますが、写しでありますので本ページ上からは動作いたしません。

個人 本則課税 一括比例配分方式用・・例 資産に係る控除対象外消費税額等明細書(平17年分)
個人 本則課税 個別対応方式用  ・・例 資産に係る控除対象外消費税額等明細書(平18年分)
個人 簡易課税 原則計算方式用  ・・例 資産に係る控除対象外消費税額等明細書(平19年分)
個人 簡易課税 特例計算方式用  ・・例 資産に係る控除対象外消費税額等明細書(平20年分)
法人 本則課税 一括比例配分方式用
法人 本則課税 個別対応方式用
法人 簡易課税 原則計算方式用
法人 簡易課税 特例計算方式用

控除対象外消費税額等計算入力フォーム

 最終的に、下記のような振替伝票を起票する流れとしております。

振替伝票

チャート 控除対象外消費税額等の取扱い(本則課税・簡易課税ともに)

控除対象外消費税額等の取扱い

経理処理

税抜き・一括比例配分方式(法人の場合)

①課税売上高 700,000,000 課税売上割合 70%
(仮受消費税) 35,000,000 ⑤仕入税額控除 15,750,000 2,250万円×70%
②非課税売上 300,000,000 ⑥納付消費税額 19,250,000 実際納付税額
③売上合計 1,000,000,000
課税売上に係るもの 354,000,000
共通用建物取得費 45,000,000 控除対象外消費税 6,750,000 30%部分が控除対象外
共通用経費 30,000,000 内訳次のとおり
(うち交際費) (4,500,000)  建物 繰延 1/10 675,000
非課税売上に係る経費 21,000,000  経費 交際費 1/100 67,500
④課税仕入計 450,000,000  経費 雑損 6,007,500
(仮払消費税) 22,500,000