消費税法改正の状況
- 平成26年4月(平成27年4月改訂) 主として、簡易課税制度のみなし仕入率の見直し(現在位置)
- 平成25年11月(平成27年4月改訂) 主として、消費税率引上げと経過措置
- 平成22年4月 主として、事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用の見直し
平成26年3月税制改正により消費税法令の改正が行われましたが、各改正事項ごとに適用開始時期が異なるうえ、経過措置も設けられています。なかでも簡易課税制度のみなし仕入率の改正は大きな改正となります。
本稿は、国税庁作成パンフレット「消費税法令の改正等のお知らせ 平成26年4月(平成27年4月改訂)」を基に記述しております。
平成26年3月消費税法令の改正の概要
1 簡易課税制度のみなし仕入率の見直し
簡易課税制度のみなし仕入率について、現行の第四種事業のうち、金融業及び保険業を第五種事業とし、そのみなし仕入率を50%(現行60%)とするとともに、現行の第五種事業のうち、不動産業を第六種事業とし、そのみなし仕入率を40%(現行50%)とすることとされました。
【適用開始時期】 原則として、平成27年4月1日以後に開始する課税期間から適用されます。
税制改正後の簡易課税用申告書及び付表の様式(試作品)を作成しております。なお、平成27年4月末現在、国税庁ホームページの消費税申告書添付書類等には当該様式は公開されておりません。公開後、異なる場合もありますことをご了承下さい。
2 課税売上割合の計算における金銭債権の譲渡に係る対価の額の算入割合の見直し
消費税の課税売上割合の計算上、金銭債権(資産の譲渡等の対価として取得したものを除きます。)の譲渡については、その譲渡に係る対価の額の5%相当額を資産の譲渡等の対価の額に算入することとされました。
【適用開始時期】 平成26年4月1日以後に行われる金銭債権の譲渡について適用されます。
3 輸出物品販売場制度の見直し(省略いたします)
免税販売の対象物品に一定の方法で販売する消耗品(外国人旅行者などの非居住者に対して、同一の店舗における1日の販売額の合計が5千円超50万円までの範囲内のものに限ります。)が加えられました。
【適用開始時期】 平成26年10月1日以後に行われる課税資産の譲渡等(消耗品の販売)について適用されます。
1 簡易課税制度のみなし仕入率の見直し
【改正の概要】 簡易課税制度のみなし仕入率が、次のとおり改正されました。
・金融業及び保険業が、第四種事業から第五種事業へ(みなし仕入率60%⇒50%)
・不動産業が、第五種事業から新たに設けられた第六種事業へ(みなし仕入率50%⇒40%)
事業の種類 | みなし仕入率 (改正前) |
みなし仕入率 (改正後) |
|
---|---|---|---|
卸売業 | 購入した商品を性質、形状を変更しないで、他の事業者に販売する事業をいいます。 | 90% (第一種) |
90% (第一種) |
小売業 | 購入した商品を性質、形状を変更しないで、消費者に販売する事業をいいます。なお、製造小売業は第三種事業になります。 | 80% (第二種) |
80% (第二種) |
製造業等 | 農業、林業、漁業、鉱業、採石業、砂利採取業、建設業、製造業、製造小売業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業をいいます。なお、加工賃等の料金を受け取って役務を提供する事業は第四種事業になります。 | 70% (第三種) |
70% (第三種) |
その他事業 | 飲食店業、その他の事業 | 60% (第四種) |
60% (第四種) |
金融業及び保険業 | 50% (第五種) |
||
サービス業等 | 運輸通信業、サービス業(飲食店業を除く) | 50% (第五種) |
50% (第五種) |
不動産業 | 40% (第六種) |
【適用開始時期】
この改正は、平成27年4月1日以後に開始する課税期間から適用されます。ただし、次の経過措置が設けられています。
簡易課税制度の改正に係る経過措置の内容
平成26年9月30日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した事業者は、平成27年4月1日以後に開始する課税期間であっても当該届出書に記載した「適用開始課税期間」の初日から2年を経過する日までの間に開始する課税期間(簡易課税制度の適用を受けることをやめることができない期間)については、改正前のみなし仕入率が適用されます。
(注)平成26年10月1日以後に、「消費税簡易課税制度選択届出書」を新たに提出した事業者は、平成27年4月1日以後に開始する課税期間から、改正後のみなし仕入率が適用されます。
例示 不動産業(第六種事業)に該当する事業を営む者に係る経過措置の適用関係
(1)3月31日決算法人の適用例 ▲=消費税簡易課税制度選択届出書の提出
課税期間 | |||||
---|---|---|---|---|---|
「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出年月日 | 自 25.04.01 至 26.03.31 |
自 26.04.01 至 27.03.31 |
自 27.04.01 至 28.03.31 |
自 28.04.01 至 29.03.31 |
自 29.04.01 至 30.03.31 |
①25.03.31以前 | 第五種で計算 | 第五種で計算 | 第六種で計算 | 第六種で計算 | 第六種で計算 |
②26.03.27提出 | (一般課税) | 第五種で計算 | 第五種で計算 | 第六種で計算 | 第六種で計算 |
③26.09.26提出 | (一般課税) | (一般課税) | 第五種で計算 | 第五種で計算 | 第六種で計算 |
④26.10.06提出 | (一般課税) | (一般課税) | 第六種で計算 | 第六種で計算 | 第六種で計算 |
(2)個人事業者及び12月31日決算法人の適用例 ▲=消費税簡易課税制度選択届出書の提出
課税期間 | ||||
---|---|---|---|---|
「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出年月日 | 自 26.01.01 至 26.12.31 |
自 27.01.01 至 27.12.31 |
自 28.01.01 至 28.12.31 |
自 29.01.01 至 29.12.31 |
①25.12.31以前 | 第五種で計算 | 第五種で計算 | 第六種で計算 | 第六種で計算 |
②26.09.26提出 | (一般課税) | 第五種で計算 | 第五種で計算 | 第六種で計算 |
③26.10.06提出 | (一般課税) | 第五種で計算 | 第六種で計算 | 第六種で計算 |
④27.03.16提出 | (一般課税) | (一般課税) | 第六種で計算 | 第六種で計算 |
ご注意ください
簡易課税制度の適用を受けている事業者が、その適用を受けることをやめようとする場合には、適用を受けることをやめようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。ただし、簡易課税制度の適用を受けている事業者は、2年間継続して適用した後でなければ、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出して、その適用をやめることはできません。
【具体例】 平成25年3月31日以前に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出して、簡易課税制度の適用を受けている事業者が、平成27年4月1日に開始する課税期間から、その適用を受けることをやめようとするときは、平成27年3月31日までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
2 課税売上割合の計算における金銭債権の譲渡に係る対価の額の算入割合の見直し
【改正の内容】これまで、消費税の課税売上割合(注)の計算上、貸付金、預金、売掛金その他の金銭債権(資産の譲渡等の対価として取得したものを除きます。(※))の譲渡については、その譲渡に係る対価の額の全額を資産の譲渡等の対価の額(分母)に算入することとされていましたが、今回の改正によりその譲渡に係る対価の額の5%相当額を資産の譲渡等の対価の額(分母)に算入することとされました。
※ 資産の譲渡等の対価として取得した金銭債権の譲渡については、その譲渡等の対価の額は課税売上割合の計算上、資産の譲渡等の対価の額(分母)に含めないこととされています。
(注)課税売上割合とは、その課税期間中の国内における資産の譲渡等の対価の額の合計額(税抜き)に占めるその課税期間中の国内における課税資産の譲渡等の対価の額(税抜き)の合計額の割合をいいます。
(分子)課税資産の譲渡等の対価の額(課税売上高(税抜き)+免税売上高)÷(分母)資産の譲渡等の対価の額(課税売上高(税抜き)+免税売上高+非課税売上高)
改正前 金銭債権の譲渡に係る対価の額の全額を資産の譲渡等の対価の額(分母)に算入
改正後 金銭債権の譲渡に係る対価の額の5%に相当する金額を資産の譲渡等の対価の額(分母)に算入
【適用開始時期】
この改正は、平成26年4月1日以後に行われる金銭債権の譲渡について適用されます。