消費税法令の改正について 平成22年3月税制改正 大阪府高槻市の松本寿一税理士事務所

消費税法令の改正について 平成22年3月税制改正

消費税法改正の状況

本稿は、国税庁作成パンフレット「消費税法改正のお知らせ 平成22年4月」を基に記述しております。

『平成22年4月1日以後、課税事業者を選択した皆様・資本金1千万円以上の法人を設立した皆様へ』と題して改正事項の解説がなされています。

消費税法の一部が改正され、平成22年4月1日以後に次の①、②のいずれにも該当する事業者の方は、免税事業者となることや簡易課税制度を適用して申告することが一定期間制限されることとなりました。

前提①
イ 課税事業者選択届出書を提出し、平成22年4月1日以後開始する課税期間から課税事業者となる場合
ロ 資本金1千万円以上の法人を設立した場合

前提②
課税事業者となった課税期間の初日から2年を経過する日までの間に開始した課税期間中に、
新設法人の基準期間がない事業年度に含まれる課税期間中に、

調整対象固定資産の課税仕入れを行い、かつ、その仕入れた日の属する課税期間の消費税の申告を一般課税で行う場合

前提①、②のいずれにも該当すれば、次のような制限を受けることになります。

調整対象固定資産の課税仕入れを行った日の属する課税期間の初日から原則として3年間は、
免税事業者となることはできません。
また、簡易課税制度を適用して申告することもできません。(一般課税により消費税の申告書行う必要があります。)

※ 調整対象固定資産に該当する課税貨物を保税地域から引き取った場合も含まれます。なお、調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の資産で、建物及びその付属設備、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具備品、鉱業権等の無形固定資産その他の資産で消費税等に相当する金額を除いた金額が100万円以上のものが該当します。

課税事業者を選択した場合の具体的な適用事例

課税事業者を選択した事業者が、次のイ~ハのすべてに該当する場合には、ロの課税仕入れを行った課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間(図1の3期目)の初日以後でなげれば、課税事業者選択不適用届出書及び簡易課税制度選択届出書は提出できません。したがって、図1のように3年間は一般課税での申告が必要となります。
イ 課税事業者の選択が強制される期間中(原則として2年間:図1の1期目、2期目中)に、
口 調整対象固定資産の課税仕入れを行った場合
ハ その課税仕入れを行った課税期間につき一般課税で申告する場合

課税事業者となった1期目に調整対象固定資産の課税仕入れを行った場合

適用事例 課税事業者となった1期目に調整対象固定資産の課税仕入れを行った場合


また、図2のように、課税選択2期目(図2の2期目)に上記イ~ハに該当する揚合には、その2期目から上記の特例の対象となります。これらの対象となった場合には、図2のように調整対象固定資産の課税仕入れを行う前に、既に課税事業者選択不適用届出書簡易課税制度選択届出書を提出している場合でも、これらの届出書の提出はなかったものとみなされます。

課税事業者となった2期目に調整対象固定資産の課税仕入れを行った場合

適用事例 課税事業者となった2期目に調整対象固定資産の課税仕入れを行った場合


図1・2の適用関係

① 平成22年4月1日以後に課税事業者選択届出書を提出した事業者で、かつ、同日以後に開始する課税期間から本改正が適用されます。
※ 平成22年4月1日以後に課税事業者選択届出書を提出した場合でも、その課税期間が事業を開始した課税期間であるときは、その課税期間から課税事業者となることができますが、同日前に開始した課税期間であれば本改正の適用はなく、翌課税期間からの適用となります。
② 課税選択の1期目が事業を開始した課税期間である揚合の簡易課税制度選択届出書の提出については、次の点に留意して下さい。
ⅰ その課税期間(1期目)から適用を受けようとする場合に提出する届出書であるときは、調整対象固定資産の課税仕入れを行った後でも当該届出書を提出できます。したがって、当該届出書を提出すれば上記ハの要件を満たさないため本改正の適用はありません。
ⅱ その課税期間(1期目)の翌期(2期目)から適用を受けようとする場合に提出する届出書であるときは、調整対象固定資産の課税仕入れを行う前に提出した場合でも、図2と同様に当該届出はなかったものとみなされます。

資本金1千万円以上の法人を設立等した場合の具体的な適用事例

資本金1千万円以上の新設法人が、次のイ~ハのすべてに該当する場合には、ロの課税仕入れを行った課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間(図3の3期目)までの各課税期聞については、免税事業者となることができません。また、当該3年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、簡易課税制度選択届出書の提出はできません。したがって、図3のようにロの課税仕入れを行った課税期聞から3年間は一般課税での申告が必要となります。
イ その基準期聞がない事業年度(前々事業年度のない設立当初の事業年度(基本的に2年間)をいいます。)に含まれる各課税期間中に、
口 調整対象固定資産の課税仕入れを行った場合
ハ その課税仕入れを行った課税期聞につき一般課税で申告する揖合
※ 上記の新設法人には、基準期間のない事業年度開始の日における資本金が1千万円以上の合併、分割により設立された法人も含みます。

資本金1千万円以上の新設法人が設立1期目に調整対象固定資産の課税仕入れを行った場合

適用事例 資本金1千万円以上の新設法人が設立1期目に調整対象固定資産の課税仕入れを行った場合


また、図4のように、新設2期目(図4の2期目)に上記イ~ハに該当する場合には、その2期目から上記の特例の対象となります。これら特例の対象となった場合には、図4のように調整対象固定資産の課税仕入れを行う前に既に簡易課税制度選択届出書を提出している場合でも、当該届出書の提出はなかったものとみなされます。

資本金1千万円以上の新設法人が設立2期目に調整対象固定資産の課税仕入れを行った場合

適用事例 資本金1千万円以上の新設法人が設立2期目に調整対象固定資産の課税仕入れを行った場合


図3・4の適用関係

① 平成22年4月1日以後に設立された法人で、事業年度の開始の日の資本金が1千万円以上である法人に適用されます。同日以後に設立した法人であれば、例えば、設立時の資本金が1千万円未満であっても、それ以後の基準期聞がない事業年度の初日の資本金が1千万円以上になれば、その事業年度に含まれる課税期聞から適用されます。
② 設立1期目は、事業を開始した課税期間仁該当するため、簡易課税制度選択届出書の提出についての留意点は図1・2の適用聞係の②と同じです。

ご注意

平成22年4月1日以後に①標税事業者を選択される場合、②資本金1千万円以上の法人を設立される場合には、以下の点にご留意ください。

1 法第9条第7項、法第12条の2第2頂が適用される場合には、事業を廃止した場合を除き、調整対象固定資産の課税仕入れ後3年聞は一般課税より消費税の申告を行っていただくこととなります。申告に当たっては、特に次の点にご注意ください。
イ 調整対象固定資産の課税仕入れを行った課税期間の開始の日から3年を経過する日の属する課税期間において、課税売上割合が著しく変動し、当該課税期間の末日に調整対象固定資産を所有している揚舎には、「調整対象固定資産に関する課税仕入れに係る消費税額の調整」 を行う必要があります(法33)。
※ 上記3年を経過する日の属する課税期聞の末日までに、調整対象固定資産を売却等処分した場合には、上記調整計算の適用対象となりませんが、この場合でも法第9条第7項又は法第12条の2第2項の規定は適用され、課税事業者選択不適用届出書簡易課税制度選択届出書の提出は制限されます。
ロ また、上記3年を経過する日の属する課税期間までの間に、当該調整対象固定資産を課税売上げのみに対応するものから非課税売上げに対応するものへ用途変更した場合(その逆の用途変更も同様です。)にも、用途変更に伴う仕入控除税額の調整計算が必要となることがあります(法34、35条)。
2 課税事業者を選択された事業者が、課税事業者選択不適用届出書簡易課税制度選択届出書を提出する揚合、その届出を行うことができる要件を満たしているかどうかを、図1・2等によりよく確認を行ってから提出してください。
同様に、資本金1千万円以上の法人を設立した場合に簡易課税制度選択届出書を提出するときにも、図3・4等によりその提出要件を満たしているか、よく確認を行ってから提出してください。
なお、両届出書については、要件を確認する欄を設けていますので、届出の際には必ず要件確認欄の記載を行ってください。
3 本改正は、事業を開始した課税期聞から課税事業者を選択する事業者が、その課税期聞から簡易課税制度を適用しようとする揚合、又は資本金1千万円以上の法人を設立し、その設立の日の属する課税期間から簡易課税制度を適用しようとする場合の簡易課税制度選択届出書について、その提出を制限するものではありません。