消費税の課税仕入れに係る税額控除は、課税仕入れ等を行った課税期間で一括控除を行うことを原則とし、この点、固定資産を減価償却制度を通じ費用化する所得税・法人税とは大きく異なります。
ただ、一括控除と言えども課税事業者が行った課税仕入れのうち、一定の固定資産にについては、その固定資産が長期にわたり使用されることから、仕入時の現況だけで税額控除額を確定することが適切でないと考えられる場合があります。
その後に、その資産の使用形態の変更や課税売上割合の変動がある場合、仕入時の税額控除の計算が適切であったかどうか。
よって消費税法では、このような場面もあることを配慮し、次のケースに該当する場合、一定の方法により翌期以降の課税期間において仕入控除税額を調整することとされています。
- 課税売上割合が著しく変動した場合
- 固定資産を課税業務用から非課税業務用に転用した場合
- 非課税業務用から課税業務用に転用した場合
このような調整の対象となるのが調整対象固定資産であり、
一つの取引単位又は保税地域から引取られる課税貨物の金額が100万円(税抜き)以上のもので、
通常、建物・構築物・機械及び装置・船舶・航空機・車両運搬具・工具器具備品等が該当すると考えられます。
1、課税売上割合が著しく変動した場合の仕入控除税額の調整
仕入税額控除を※比例配分法により控除
YES ↓※一括比例配分方式及び個別対応方式における共通部分の按分計算を行う場合
3年を経過する課税期間の末日において調整対象固定資産を保有
YES ↓
課税売上割合が著しく変動
YES ↓
以上に該当すれば、税額調整が必要となります。
課税売上割合が著しく変動し、調整が必要な場合の計算方法は次の二通り
※調整対象基準税額 第3年度の課税期間末日に有する調整対象固定資産の課税仕入に係る消費税額
調整対象固定資産の調整計算シート
当事務所では、この煩わしい消費税の調整計算を、下記のような自動計算ファイルにて対応しております。入力フォームから必要事項の入力を行うことにより自動計算にて計算結果を表示します。
写しでありますので、当事務所ホームページ上では、このフォームの操作を行うことができません。また、ダウンロード等のサービスも行ってはおりません。
このような税額調整は、すべての消費税課税事業者が行う訳ではなく、また、下記の転用の場合も、すべての転用に調整が必要という訳ではありませんが、こと消費税に関しては税額に直接影響が生じるため、くれぐれも税額調整の適否については十分検討を行う必要があると思われます。

2及び3 転用の場合の仕入控除税額の調整
課税売上割合が著しく変動した場合の仕入控除税額の調整の場合と同様に、
固定資産を課税業務用から非課税業務用に転用した場合や非課税業務用から課税業務用に転用した場合も調整を行う必要が生じます。
①課税業務用 ⇒ 非課税業務用
事業者(免税事業者を除く)が、「調整対象固定資産」を課税業務用のみに供するとして「個別対応方式」により仕入れに係る消費税額の計算を行っている場合で、取得の日から3年以内に非課税業務用に転用した場合は、
転用をした日の属する課税期間の控除対象仕入税額から控除しなければならないとされています。
転用時期の区分 | 控除対象仕入税額から控除 |
---|---|
取得の日から1年を経過する日まで(1年以内) | 控除税額の全額 |
上記期間末日の翌日から1年を経過する日まで(2年以内) | 控除税額の2/3相当額 |
上記期間末日の翌日から1年を経過する日まで(3年以内) | 控除税額の1/3相当額 |
②非課税業務用 ⇒ 課税業務用・・・上記①の逆
事業者(免税事業者を除く)が、「調整対象固定資産」を非課税業務用のみに供するとして「個別対応方式」により仕入れに係る消費税額の計算を行っている場合で、取得の日から3年以内に課税業務用に転用した場合は、
転用をした日の属する課税期間の控除対象仕入税額に加算することとされています。
転用時期の区分 | 控除対象仕入税額に加算 |
---|---|
取得の日から1年を経過する日まで(1年以内) | 控除税額の全額 |
上記期間末日の翌日から1年を経過する日まで(2年以内) | 控除税額の2/3相当額 |
上記期間末日の翌日から1年を経過する日まで(3年以内) | 控除税額の1/3相当額 |