事業用資産の買換特例について(譲渡所得課税の特例) 大阪府高槻市の松本寿一税理士事務所

事業用資産の買換特例について 租税特別措置法第37条

事業の用に供している特定の地域内にある土地建物等を譲渡し、一定期間内特定地域内にある土地建物等の特定の資産を取得し、その取得の日から1年以内に買換資産を事業の用に供した場合には、事業用買換特例を受けることができます。

特例を受けるための要件

1、譲渡資産も買換資産も事業の用に供すること。
(事業に準じるものは含まれますが、棚卸資産などは含まれません。)

2、譲渡資産と買換資産は、下記表の組み合わせとなること。

3、譲渡資産が土地の場合、原則として取得する土地の面積は譲渡資産の5倍以内であること。
(5倍を超える面積はこの特例は適用されません。例外的に10倍などがあります。)

4、原則として譲渡した年か、前年か翌年に買換え資産を取得すること。
(先行取得も翌年取得の場合も、ともに一定の届出書等の提出が必要です。)

買換特例 取得時期のイメージ

例外的に先行取得は2年以内、翌年以降は3年以内とされますが、この場合は「やむを得ない事情がある場合」に限られます。 客観的に特別な事情であることが求めれられます。

前年取得の場合 先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書

翌年取得の場合 買換(代替)資産の明細書

5、事業用資産を取得してから1年以内に事業の用に供すること。

6、他の特例との重複適用はできません。(措法31条の2 優良住宅地等・・・の特定分の税率適用など)

7、土地等の譲渡の場合、原則として譲渡した年の1月1日現在所有期間が5年を超えていること。
(下記表一号既成市街地等内から外への買換のように10年という場合もありますし、5年以下でも可の場合もあります。)

8、譲渡資産の譲渡形態は、収用等、贈与、交換、出資、代物弁済によるものでないこと。
買換資産の取得の形態が、贈与、交換、代物弁済によるものでないこと。

(原則的な解説にとどめておりますので、詳細は法令等でお確かめください。)

譲渡所得の計算

譲渡資産の収入金額<買換資産の取得価額 (持ち出しの場合)

①収入金額=譲渡収入×20%
②必要経費=(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×20%
③所得金額=①-②

譲渡資産の収入金額>買換資産の取得価額 (使い残しの場合)

①収入金額=譲渡収入-(買換資産の取得価額×80%
②必要経費=(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×①の金額/譲渡収入
③所得金額=①-②

申告の手続

①所得税申告書の特例適用条文欄に「措置法37条」と記載
②申告書とともに「譲渡所得の内訳書」の提出
③取得した買換資産の登記事項証明書や所在地域を証明した市町村長証明書などの提出

取得価額の引継計算

この買換特例を適用した場合、譲渡所得の金額は、この特例を適用しない場合に比べ圧縮(少なく)することができますが、
 買換資産の取得価額の金額も圧縮計算を行わなければならず、事業所得等の金額の計算上、必要経費である減価償却費が減額となり、長期にわたる納税額の増加及び買換特例を適用した資産を譲渡した場合には、譲渡益の増加又取得時期は引継がないため、短期間での譲渡は税率の高い短期譲渡所得となるという側面もあります。

あくまで課税の繰延制度ですので、慎重に判断される必要があります。

各特例計算別 引継価額の計算はこちらから

単体での引継価額の計算は(譲渡所得計算明細書)こちらから

当事務所では、この引継価額の計算を自動計算で行うエクセルファイルを用意しております。

(参考)租税特別措置法第37条第1項中の表 (平成26年分用)

左の譲渡資産を譲渡し、右の表の買換資産を取得した場合の組合せ

例えば、既成市街地内にある事業用資産を譲渡し、既成市街地外にて事業用資産を買換えた場合は、
表の「1号」に該当し、この「事業用資産の買換特例」を適用することができます。

譲渡資産 買換資産
 次に掲げる区域(政令で定める区域を除く。以下この表において「既成市街地等」という。)内にある事務所若しくは事業所で政令で定めるものとして使用されている建物(その附属設備を含む。以下この表において同じ。)又はその敷地の用に供されている土地等(土地又は土地の上に存する権利をいう。以下この条において同じ。)で、当該個人により取得がされたこれらの資産のうちその譲渡の日の属する年の一月一日において所有期間(第三十一条第二項に規定する所有期間をいう。第九号及び第五項において同じ。)が十年を超えるもの(次号の上欄に掲げる資産にも該当するものを除く。)
イ 首都圏整備法第二条第三項に規定する既成市街地
ロ 近畿圏整備法第二条第三項に規定する既成都市区域
ハ イ又はロに掲げる区域に類するものとして政令で定める区域
 既成市街地等以外の地域内(国内に限る。以下この表において同じ。)にある土地等、建物、構築物又は機械及び装置(農業及び林業以外の事業の用に供されるものにあっては次に掲げる区域(ロに掲げる区域にあっては、都市計画法第七条第一項の市街化調整区域と定められた区域を除く。)内にあるものに限るものとし、農業又は林業の用に供されるものにあっては同項の市街化区域と定められた区域(以下第三号までにおいて「市街化区域」という。)以外の地域内にあるものに限る。)
イ 市街化区域のうち都市計画法第七条第一項ただし書の規定により区域区分(同項に規定する区域区分をいう。)を定めるものとされている区域
ロ 首都圏整備法第二条第五項又は近畿圏整備法第二条第五項に規定する都市開発区域その他これに類するものとして政令で定める区域
 市街化区域又は既成市街地等の地域内にある農業の用に供される土地等、建物又は構築物  市街化区域及び既成市街地等以外の地域内にある土地等(その面積が上欄に掲げる土地等に係る面積を超えるもの又は当該個人が所有権、賃借権若しくは使用貸借による権利を有する土地に隣接する土地等に限る。)、建物、構築物又は機械及び装置で、農業経営基盤強化促進法第十二条第一項に規定する農業経営改善計画に係る同項の認定を受けた個人(第七号において「認定農業者」という。)又は同法第十四条の四第一項に規定する青年等就農計画に係る同項の認定を受けた個人(同号において「認定就農者」という。)の農業の用に供されるもの
 次に掲げる区域(以下この号において「航空機騒音障害区域」という。)内にある土地等(平成二十六年四月一日又はその土地等のある区域が航空機騒音障害区域となった日のいずれか遅い日以後に取得(相続、遺贈又は贈与による取得を除く。)をされたものを除く。)、建物又は構築物でそれぞれ次に定める場合に譲渡をされるもの
イ 特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法第四条第一項に規定する航空機騒音障害防止特別地区 同法第八条第一項若しくは第九条第二項の規定により買い取られ、又は同条第一項の規定により補償金を取得する場合
ロ 公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律第九条第一項に規定する第二種区域 同条第二項の規定により買い取られ、又は同条第一項の規定により補償金を取得する場合
ハ 防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律第五条第一項に規定する第二種区域 同条第二項の規定により買い取られ、又は同条第一項の規定により補償金を取得する場合
 航空機騒音障害区域以外の地域内にある土地等、建物、構築物又は機械及び装置(農業又は林業の用に供されるものにあっては、市街化区域以外の地域内にあるものに限る。)
 過疎地域自立促進特別措置法第二条第一項に規定する過疎地域(同項に規定する過疎地域に係る市町村の廃置分合又は境界変更に伴い同法第三十三条第一項の規定に基づいて新たに同法第二条第一項に規定する過疎地域に該当することとなった区域その他政令で定める区域を除く。以下この号において「過疎地域」という。)以外の地域内にある土地等、建物又は構築物(既成市街地等内にあるものにあっては、事務所若しくは事業所で政令で定めるものとして使用されている建物又はその敷地の用に供されている土地等に限る。)  過疎地域内にある特定資産(土地等、建物、構築物又は機械及び装置をいう。次号及び第六号において同じ。)
 都市再生特別措置法第九十五条第一項に規定する都市機能誘導区域(以下この号において「都市機能誘導区域」という。)以外の地域内にある土地等、建物又は構築物  都市機能誘導区域内にある特定資産で、当該都市機能誘導区域内における同項に規定する誘導施設等整備事業に係る同法第九十九条に規定する認定誘導事業計画に記載された同項に規定する誘導施設において行われる事業の用に供されるもの
 既成市街地等及びこれに類する区域として政令で定める区域内にある土地等、建物又は構築物  上欄に規定する区域内にある特定資産で、土地の計画的かつ効率的な利用に資するものとして政令で定める施策の実施に伴い、当該施策に従って取得をされるもの
 農業振興地域の整備に関する法律第八条第一項の農業振興地域整備計画において同条第二項第一号の農用地区域として定められている区域(以下この号において「農用地区域」という。)内にある土地等  農用地区域内にある土地等で認定農業者又は認定就農者が農業経営基盤強化促進法第十九条の規定による公告があつた同条の農用地利用集積計画の定めるところにより取得をするもののうち、その面積が上欄に掲げる土地等に係る面積を超えるもの又は当該認定農業者若しくは認定就農者が所有権、賃借権若しくは使用貸借による権利を有する土地に隣接するもの
 密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律第三条第一項第一号に規定する防災再開発促進地区のうち地震その他の災害が発生した場合に著しく危険な地区として政令で定める地区(以下この号において「危険密集市街地」という。)内にある土地等、建物又は構築物で、当該土地等又は当該建物若しくは構築物の敷地の用に供されている土地等の上に耐火建築物又は準耐火建築物(それぞれ建築基準法第二条第九号の二に規定する耐火建築物又は同条第九号の三に規定する準耐火建築物をいう。)で政令で定めるものを建築するために譲渡をされるもの  当該危険密集市街地内にある土地等、建物又は構築物で、密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律による防災街区整備事業に関する都市計画の実施に伴い、当該防災街区整備事業に関する都市計画に従って取得をされるもの
 国内にある土地等、建物又は構築物で、当該個人により取得がされたこれらの資産のうちその譲渡の日の属する年の一月一日において所有期間が十年を超えるもの  国内にある土地等(事務所、事業所その他の政令で定める施設(以下この号において「特定施設」という。)の敷地の用に供されるもの(当該特定施設に係る事業の遂行上必要な駐車場の用に供されるものを含む。)又は駐車場の用に供されるもの(建物又は構築物の敷地の用に供されていないことについて政令で定めるやむを得ない事情があるものに限る。)で、その面積が三百平方メートル以上のものに限る。)、建物、構築物又は機械及び装置
 船舶(船舶法第一条に規定する日本船舶に限る。以下この号において同じ。)のうちその進水の日からその譲渡の日までの期間が政令で定める期間に満たないもの  船舶(政令で定めるものに限る。)