新減価償却制度による固定資産台帳 平成23年度改正対応 大阪府高槻市の松本寿一税理士事務所

新減価償却制度による固定資産台帳

固定資産台帳とは、業務用の減価償却資産や繰延資産について、個々に口座を設け、資産の取得や異動に関する事項を記入しておく帳簿で、事業者は必ず備え付けておくべき帳簿となります。


減価償却制度は、過去から数次にわたり改正が行われておりますが、近年の改正は、いずれも大きな改正となります。

平成19年度税制改正・・・平成19年4月1日以後に取得された資産については、償却率の変更や償却可能限度額及び残存価額が廃止され1円(備忘価額)まで償却が可能となり、また、同日より前に取得し、償却計算を行っている資産についても影響があるところです。

平成23年度税制改正・・・改正により、定率法の償却率が見直され、平成24年4月1日以後に取得した減価償却資産に適用される定率法の償却率が、定額法の償却率を2倍した償却率200%定率法)に引き下げられることになりました。従前は、2.5倍した償却率250%定率法)。

これら税制改正により、固定資産の管理は、以前にもまして煩雑となったことは否めません。


下記各表は、当事務所作成 固定資産台帳エクセルファイルの写しであります。本稿での写しの掲載は、「3」の200%定率法のみとさせて頂きます。
薄い黄色の塗つぶし部分に必要事項の入力を行いますと、法定耐用年数までの各年の償却額が自動計算されます。

下記ファイルは写しでありますので、ホームページ上では動作致しません。また、顧問先配布用のため販売やダウンロード等は行っておりません。

 この固定資産台帳エクセルファイルは次の8つのシートから構成されています。

  1. 平成19年4月1日以後に取得した新定額法適用資産用
  2. 平成19年3月31日以前に取得した旧定額法適用資産用
  3. 平成24年4月1日以後に取得した200%定率法適用資産用
  4. 平成19年4月1日以後に取得した250%定率法適用資産用
  5. 平成19年3月31日以前に取得した旧定率法適用資産用
  6. 別表10(平成24年改正後の耐用年数に応じた償却率等)
  7. 別表10(平成19年改正後の耐用年数に応じた償却率等)
  8. 別表9(平成19年改正前の耐用年数に応じた償却率)

新・旧と表現しておりますが、便宜的に違いを表現するために表記しております。

いずれの計算シートも、改正税法に対応したもので、
「3」では、平成23年改正に対応した200%定率法の償却計算を行い、
「1」及び「4」においては、平成19年4月1日に取得した資産を残存価額1円(備忘価額)まで償却計算が行え、(定率法は250%定率法)
「2」及び「5」においては、同日以前に取得し、取得価額の95%相当額(改正前償却可能限度額)に達している資産を残存価額1円(備忘価額)まで償却計算を行えるようにしたものです。


●適用時期 前回の改正と異なり、法人・個人ともに平成24年4月1日以後に取得する資産から適用になります。

(注)⑦事業専用割合の欄は取得時点でその割合(業務に供している部分の金額)が判明している場合は、直接取得価額欄にその金額の記載を行い、割合は100%とする方法も可能かと考えます。
個人の方は業務と家事の併用ということもあり、上記のような処理も可能と言うことで、法人の方は基本的に取得する資産は全て業務の用に供するはずです。

 下記表は、改正前250%定率法と改正後の200%定率法の償却限度額などを表したものですが、各年の償却限度額の推移は、改正前に比べなだらかとなります。
ただ、償却費総額は改正前と同額であり、10年後の期末帳簿価額は、ともに備忘価額の1円となります。(耐用年数10年、取得価額1,000,000円)
改正前 250%定率法
年数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
期首帳簿価額 1,000,000 750,000 562,500 421,875 316,407 237,306 177,980 133,485  88,902 44,319
調整前償却額 250,000 187,500 140,625 105,468 79,101 59,326 44,495 33,371
償却保証額 44,480 44,480 44,480 44,480 44,480 44,480 44,480 44,480
改定取得価額
×改定償却率
44,583 44,583 (44,583)
償却限度額 250,000 187,500 140,625 105,468 79,101 59,326 44,495 44,583 44,583 44,318
期末帳簿価額 750,000 562,500 421,875 316,407 237,306 177,980 133,485 88,902 44,319 1
改正後 200%定率法
年数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
期首帳簿価額 1,000,000 800,000 640,000 512,000 409,600 327,680 262,144 196,608 131,072 65,536
調整前償却額 200,000 160,000 128,000 102,400 81,920 65,536 52,428
償却保証額 65,520 65,520 65,520 65,520 65,520 65,520 65,520
改定取得価額
×改定償却率
65,536 65,536 65,536 (65,536)
償却限度額 200,000 160,000 128,000 102,400 81,920 65,536 65,536 65,536 65,536 65,535
期末帳簿価額 800,000 640,000 512,000 409,600 327,680 262,144 196,608 131,072 65,536 1
平成24年4月以降の定率法償却率表の抜粋
耐用年数 償却率 改定償却率 保証率
10 0.200 0.250 0.06552
【事例】上記の資産(耐用年数10年、取得価額1,000,000円)を取得したX月1日以後事業開始の法人で、新法の200%定率法のケースを掲載しております。
他の償却方法の掲載は割愛させて頂きます。

「3」 200%定率法の場合

耐用年数10年の償却率0.200にて償却を行いますが、最終年は残存価額1円を残す必要がありますので、下記のような計算となります。

200%定率法の償却推移

参考資料

下記のグラフは、250%定率法と200%定率法を適用した場合の残存価額(各年の償却額控除後の金額)の推移であります。
改正後、新旧ともに曲線の違いこそあれ、10年後には残存価額1円まで償却することになります。

新旧減価償却計算の残存価額の推移