平成18年分 不動産所得のある方の所得税申告書記載例 大阪府高槻市の松本寿一税理士事務所

平成18年分 不動産所得のある方の所得税申告書記載例

×× ××氏は給与所得者ですが、新たに平成18年1月に借入金で貸付物件を取得し、不動産所得を有することになりました。(期限内に届出を提出し、青色申告者)また、物件の一部は割増償却の対象となるものであります。

数字等は仮定のもので、下記に「青色申告決算書」、「土地等の取得に要した借入金利子の計算明細書」、「割増償却に関する明細書」の順で記載例を掲載しております。
掲載しております様式は、エクセルにて作成したもので、一部自動計算を行う部分を設けております。OCR様式の読み取り枠は一部を除き省いております。

申告書 第一表の所得金額の状況

所得の状況 収入金 必要経費 内専従者給与 青色申告特別控除 差引金額 土地等取得利子
不動産所得 38,500,000 39,973,013 0 △1,473,013 5,318,132
給与所得 6,648,300 給与所得控除 4,783,470

不動産所得は青色申告決算書から転記を行います。
「決算書第一面」⇒「決算書第三面」⇒「決算書第四面」の順で掲載しております。参照ください。

申告書 第二表の所得控除の状況

所得控除 内容 支払金額 摘要 申告書への記入場所 関連様式
社会保険料控除 給与からの控除分 768,410 全額控除 第二表 12、第一表 12 年調済み
生命保険料控除 一般分・個人年金分 100,000 限度額計算 第二表 14、第一表 14 年調済み
損害保険料控除 3,000 限度額計算 第二表 15、第一表 15 年調済み
配偶者控除 所得なし 380,000 定額控除 第二表 21、第一表 21
扶養控除 所得なし 760,000 定額控除 第二表 23、第一表 23
基礎控除 380,000 定額控除 第一表 24

第二表へは支払った金額をそのまま記載しますが、生保控除などは限度額計算を行った後の金額を第一表へ記載します。

青色申告決算書第一面

不動産所得は、下記のような損益面の状況となり、△1,473,013円の損失となりましたが、「土地等を取得するために要した負債の利子の額」欄に着目していただくと、「5,318,132円」の金額が記入されています。

この金額は、次様式「土地等の取得に要した借入金利子の計算明細書」から転記されるものですが、結局不動産所得の赤字を認めないこととなります。

この事例では、不動産所得の赤字と給与所得の黒字を損益通算しようとする目論見が、法規制により否定されてしまいます。

この「不動産所得に係る損益通算の特例」についての制度・背景の記述はこちらを参考願います。

結果から申し上げますと、割増償却の適用を受けない方がベター、差引金額は生じますが、青色申告特別控除が差引けば所得金額はゼロとなります。ただし単年分での判断ですので、長期間での有利不利の検討は必要であります。

青色申告決算書(不動産所得用)第一面

土地等を取得するために要した借入金利子の計算明細書

下記の事例は、取得した共同住宅2棟は、ともに借入金をもって購入し、土地等の取得が含まれているため計算結果の⑮が「土地等を取得するために要した負債の利子の額」とされる金額となります。

土地等の取得に要した借入金利子の計算明細書

青色申告決算書第三面

次は「青色申告決算書第三面」の様式ですが、取得した2棟の建物のうち、1棟が要件を備えていますので
通常の減価償却計算に加え、特例計算である割増償却を適用しています。
「ヘ 割増(特別)償却」欄の金額ですが、この計算は次様式「中心市街地優良賃貸住宅等の割増償却に関する明細書」から転記することになります。

青色申告決算書(不動産所得用)第三面

中心市街地優良賃貸住宅等の割増償却に関する明細書

割増償却の適用を受けるためには、下記の明細書の提出が必要となります。 この割増償却についての記述はこちらから

割増償却の計算明細書

青色申告決算書第四面

次は「青色申告決算書第四面」の様式で、期首と期末の資産・負債の状況を記載する貸借対照表となります。
特に、不動産所得の方は、青色申告特別控除の上限金額650,000円を控除するには、「正規の簿記の原則」に従い記帳することと、その貸付けの規模が「事業的規模であること」の制約があります。
この事例では、控除する以前に収支状況が赤字でありますので、控除する余地はありませんが、黒字の所得で複式簿記で記帳される方は、確実に記載されますように。

青色申告決算書(不動産所得用)第四面

所得税申告書第一表

不動産所得 収入金額欄「ウ」には決算書第一面の4番の金額を転記し、所得金額欄「3」は決算書第一面23番が赤字で、かつ負債利子の金額の方が上回りますので、所得金額ゼロ。この欄先頭に不表示をします。結果確定申告では納付も還付も生じません。

所得税申告書第一表