平成4年8月施行の「借地借家法」により、新たに「定期借地権の制度」が導入され、現在、新旧借地権の制度が並存している状況であります。
現行法令による借地権に関する制度
- 借地権(旧借地法)
- 普通借地権(新借地借家法)
- 一般定期借地権(新借地借家法)
- 事業用定期借地権等(新借地借家法)
- 建物譲渡特約付借地権(新借地借家法)
各借地権の概要につきましては、割愛させて頂きますが、旧借地契法における借地権の方が、圧倒的に多いと思われ、新借地借家法によるものは未だ定着したと言う感はありません。
改正法による、この新制度の定期借地権の財産評価を行うには、下記「定期借地権等の評価明細書」を用い評価を行うことになります。
様式構成は、定期借地権等の評価明細書(表)と定期借地権等の評価明細書(裏)の2面構成でありますが、「複利現価率」等の数値が必要で、この数値は、国税庁から「個別通達」で発遣される複利表に掲載されています。
平成20年分以降の複利表は次に掲載しております。
この「定期借地権等の評価明細書」では、借地権者には定期借地権の評価を、底地所有者には定期借地権が設定されている宅地の評価を行うことができます。
旧借地権と異なり、定期借地権に掛かる借地契約は個別性が強く、個々の契約内容を十分検討する必要があり、
・地主側から見た返還する必要のない権利金等の有無、
・地主側から見た返還を要する保証金等の有無、
・保証金等は無利息であるのか否か
・借地契約は、純粋な第3者との取引か、特殊関係者間との取引か など
借地契約の内容により、評価額を求める計算過程が異なります。
また、通常、定期借地権設定時には、保証金等の授受が行われると思われますが、相続等が発生した場合、この保証金等についても相続財産若しくは債務の金額を構成することになります。
(借地人の保証金返還請求権又は地主の保証金返還債務の額)
簡易な定期借地権のイメージは、次のとおりですが、時の経過により定期借地権の評価が逓減することが特色です。
旧借地権でれば、通常借地権割合は一定とされます。
この借地権割合は路線価図に示されており、財産評価の世界での割合でありますので、譲渡の際の価格等の割合には影響されません。
時系列による定期借地権逓減のイメージ |
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路線価図の抜粋、ページ上部に記載されている、地区区分と借地権割合 |
定期借地権等の評価につきましては、「評価明細書」に従い記入を行いますが、計算式等は、このページ下部にまとめて掲載をしております。
「一般」定期借地権設定時に、次の借地契約を締結し、10年経過後に課税時期が生じたとします。
契約内容 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|
権利金 | 5.000,000円 | |
保証金 | 4,000,000円 | 年1%利息、全額返還 |
設定時の取引価額 | 50,000,000円 | 設定時の価額 |
課税時期の自用地価額 | 100,000,000円 | 課税時期の相続税評価額 |
借利権割合 | 割合Eに所在 |
複利率 | 摘要 | |
---|---|---|
設定時の複利現価率 | 0.475 | 複利表を参照、それぞれの率を移記します。 今回1月~3月分の複利表を参照しています。 |
設定時の複利年金現価率 | 35.000 | |
残存期間の複利年金現価率 | 29.916 |
上記の契約内容によれば、
「一般」定期借地権の評価額(⑬番の金額)=39,445,528円
底地の評価額 裏面1のA該当(⑰番の金額)=60,554,472円 となります。
また、本事例は裏面用に記載済みのとおり、
同族関係者間等で、借地契約時において通常交わされる地代よりも低廉な場合、評価額にどのような影響を生じるかを掲載しております。
金額 | 摘要 | |
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同種同等地代 | 900,000円 | 複利表を参照、年賦償還率を移記します。 今回2月~4月分の複利表を参照しています。 |
実質地代 | 240,000円 |
下記の様式は、エクセルにて作成したもので、入力フォームに必要事項の入力を行うことで、自動計算にて「定期借地権等」の評価額を求めます。
記入済みの数字等はあくまで仮定のもので、このエクセルファイルは「評価明細書(表)」・「同表(裏)」・「複利表」連動し動作します。
誠に申し訳ありませんが、写しでありますので、このホームページ上からは動作いたしません。
定期借地権等の評価明細書(表)
定期借地権等の評価明細書(裏)
定期借地権の評価は、
原則的にとされますが、
簡便的に次の計算式によることも出来ます。
「評価明細書」では、⑬番の計算欄にあたります。
上記の借地人に帰属ずる経済的利益の総額は、次のように表せます。
「評価明細書」では、⑫番の計算欄にあたります。
上の保証金等の記述は、
「評価明細書」では、⑩番の計算欄にあたります。
贈与を受けたと認められる差額地代は、
「評価明細書」では、⑪番の計算欄にあたります。
差額地代の額は、
一般定期借地権等の目的となっている宅地の評価
が評価額となります。
「評価明細書」では、⑭番の計算欄にあたります。
上記以外の定期借地権等の目的となっている宅地の評価
のいずれか低い方が評価額となります。
「評価明細書」では、⑰番の計算欄にあたります。