不動産管理会社(同族会社の場合) 松本寿一税理士事務所

課税庁が注目する不動産管理会社とは

不動産を多数所有する方のなかには、自身や親族が主宰する不動産管理会社を設立し、その法人に対して管理料等を支払っている場合があります。

課税庁は、このような事例の場合、個人及び同族法人を通じ不当に所得を分散し、税負担の軽減(租税回避)を図っていないか、管理料等の金額は適切であるかどうか検討を行うため税務調査が行われます。

不動産管理会社との取引形態

(1)管理委託方式 所有不動産を通常の貸料で第三者に貸し付ける一方で、不動産管理会社には管理料を支払っているものをいい、

不動産管理会社 管理委託方式

(2)又貸し方式 所有不動産を不動産管理会社に一括して貸し付け、不動産管理会社が当該物件を第三者に対して、通常の賃貸料で貸し付けているものをいいます。

又貸し方式の場合は管理料ではありませんが、対同族法人取引金額と通常賃料の差を一定の算式で「みなし管理料率」を算出し、管理委託方式と同様に支払金額の妥当性が検討されることになります。

不動産管理会社 又貸し方式

(3)資産譲渡 上記2方式とは性質が異なりますが、個人所有不動産を管理会社に売却する方法です。
 土地建物一括譲渡であればまだしも、土地のみ・建物のみであれば借地権の問題など生じ、同族法人にもそれ相当の資金が必要となってきます。

そもそも外観的に変わらないのに、譲渡者側に所得税や消費税の問題、名義変更のコスト、時価と言う問題も生じます。

高額な管理料の是正

税務調査が行われますと、貸付物件の種類・規模などから不動産管理会社の管理業務の内容等を精査され、また、同業者等と比準した場合、その管理料等が適正かどうかなどの検討を行い、支払われた管理料等が高額であれば是正を求められることになります。

理屈の上では所得税法第157条「同族会社等の行為又は計算の否認等」の法理に基づいて処理される事となるのでしょうが、多くは納税者側からの是正を促されることになります。

ところで、過大な管理料等として個人の方の所得税が修正されたとしても、同族法人側の法人税が当然のごとく訂正処理される訳ではありません。同族法人側では、管理料等その金額は、対個人との取引においては有効なものであるからです。中身の性質が変わったとしても収益は収益であります。

どのような視点や着眼点で調査が行われるか、事案それぞれでありますので一概に言えませんが、なかには何ら管理を行っていない等、明らかに問題があるケースもあります。
 よって管理会社では、不動産管理を行う上での管理業務の範囲・内容など明確化し、管理料が如何に適正に 算定されたものであるか検討を行っておく必要があると思われます。

課税庁に在籍し、処理を行ってきた立場からの個人的な考えですが、管理料率や管理料割合が何%であると大丈夫など一種の言い伝えのように言われているようですが、何の根拠のありません。
 机上・表面上の数値を取り繕っていたとしても、管理内容が伴わないなど実質が伴っていなければ何の意味もありません。

同族法人を設立し、不動産管理業務を委託方式か又貸し方式、若しくは法人が資産を所有する形態、何れにしても事務処理の煩雑さ取引内容の複雑化、また本当に節税になるのか検討を要する事柄であります。