不動産所得の必要経費である減価償却費の計算 松本寿一税理士事務所

減価償却費の計算

減価償却費の計算方法

建物・構築物・機械装置・車両など時の経過により価値が減少してゆく資産は、取得した時点の経費とはせず、耐用年数に応じ、適用する償却方法で計算された金額を必要経費とすることになります。

主として減価償却費の計算方法には、「定額法」と「定率法」がありますが、近年の税制改正は、いずれも償却計算に大きく影響を受けるものであり、また旧資産さえも適用されるものであります。そのため改正前後に取得した資産をお持ちの場合、新旧の償却方法が併存するなど、より固定資産管理に注意が必要かと思われます。

定額法は、毎年同額の償却額となるように計算されるもので、定率法は、初期の償却額が大きく、年数が経過するほどその金額が少なくなる方法であります。

近年の減価償却計算に関する改正事項
税制改正 改正の内容
平成10年度改正 建物の償却方法が定額法のみに限定され、建物等耐用年数が短縮されました。下記、新旧対象表を参照下さい。
平成19年度改正 償却可能限度額が95%から100%に変更。残存価額が廃止され、備忘価額である1年まで償却可能。
また、定率法適用の場合、新たな手法として償却保障額や改定償却率が用いられております。
償却可能限度額に達している旧資産は、その後5年間で均等償却を行います。
平成20年度改正 機械装置を中心として、区分の整理・耐用年数の見直しが行われました。

主な建物の耐用年数(平成10年改正前と改正後)

用途別、構造別に旧耐用年数(水色)と新耐用年数を併記しております。

建物耐用年数新旧対象表

個人の方の減価償却費の計算事例(青色申告決算書第3面の抜粋)

いずれも取得価額100万円で耐用年数6年の償却資産としております。
旧法の償却方法を便宜的に旧定額法と旧定率法とし、新法と区別させて頂きます。

1は改正後定率法の計算事例 =取得価額×償却率×償却期間×事業専用割合の計算式
平成24年には普通に償却計算を行うと、少額な償却費となるため、耐用年数を切替え償却計算を行うことになります。

3は改正前定額法の計算事例 平成19年分時点での旧法の計算です。=取得価額×0.9×償却率×償却期間×事業専用割合の計算式
平成26年の前に95%に達し、未償却残高50,000円をその後5年間で均等償却計算します。

4は改正前定率法の計算事例 =取得価額×償却率×償却期間×事業専用割合の計算式

減価償却計算の明細 青色申告決算書3面抜粋

修繕費と資本的支出

申告において、高額な修繕費が費用計上されている場合、その内容(修繕費でよいのか資本的支出ではないのか)が検討されることになります。
一般的に業務用固定資産に行った修繕費は必要経費とされますが、一定の支出については資本的支出とされ、修繕費の金額から除かれます。

資本的支出とは、通常の維持管理の程度を超え、資産の価値を高めたり、使用可能期間が延長したりする場合の支出をいい、その支出した年度に経費算入することは適当ではないとされています。よって、その支出した金額は資産の取得価額に加算され、償却という方法で費用化されて行くことになります。
増築等物理的に付加された部分や用途変更のための改造等については、資本的支出と判断することに困難はないのですが、なかには、修繕費か資本的支出であるか判断のつかないものに往々にして遭遇します。

通達では、下記チャートのように、少額・短期の周期のものかどうかから始まる形式的な基準が明示されていますが、やはり最後は実質判断と、すべて画一的に処理できない困難さがあります。

修繕費か資本的支出か