表題の事項について要約しますと、改正前制度は、更正の請求ができる期間は1年で、当初の申告に適用金額を記載している場合に限り可能であり(当初申告要件)、また、当初申告に記載された金額を変更できない「控除額の制限」がありました。
以上のような制約が税制改正により期間は5年、当初申告要件も一定の事項については事後的に適用され、控除額も増額することができることとされました。
ただし、増額更正を行うことができる期間も5年に改正されています。なお、増額更正の延長と均衡を図るため税制改正においても遡及できない年(度)分について「更正の申出書」の提出により救済がなされることとなりました。
以下、国税庁パンフレット「平成23年度 更正の請求の改正のあらまし」から引用し、制度の概要と使用される各税目の様式を掲載しております。
当ホームページで掲載します各税目の「更正の請求書」の解説及び様式は、次のとおりで別頁に移動します
各税目の「更正の申出書」の様式は、次のとおりで本頁の下部に掲載しております
申告書を提出した後で、所得金額や税額などを実際より多く申告していたことに気付いたときには、「更正の請求」という手続により訂正を求めることができます。この「更正の請求」について、平成23年度税制改正で、次のような改正が行われました。
更正の請求期間が延長されました
○平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する国税について適用されます。
更正の請求期間の延長
更正の請求ができる期間が法定申告期限から5年(改正前:1年)に延長されました。なお、これまでと同様に、更正の請求書が提出されると、税務署では調査によりその内容の検討をして、納めすぎの税金があると認められた場合などには、減額の更正を行い、税金を還付することになります。
(注1)税務署が減額の更正等の処分を行う場合には、更正の請求をした方にその内容を通知します。
(注2)修正申告書又は期限後申告書を提出した場合には、不服申立てをすることはできませんが、更正の請求ができる期間内であれば更正の請求を行うことができます。
(注3)贈与税及び移転価格税制に係る法人税についての更正の請求ができる期間は6年(改正前:1年)に、法人税の純損失等の金額に係る更正の請求ができる期間は9年(改正前:1年)に、それぞれ延長されました。
登記・登録等を行った機関に対して行う、登録免許税の計算誤りなどがあった場合の過誤納金の還付に係る通知の請求期間について、この請求期間も、登記・登録等を受けた日から5年(改正前:1年)に延長されました。
運輸支局等に対し、自動車重量税を納付した後に自動車検査証の交付等を受けることをやめた場合、又は、過大に自動車重量税を納付して自動車検査証の交付等を受けた場合に、過誤納金の還付に係る証明書の交付を請求できる期間は、その該当することとなった日から5年(改正前:1年)に延長されました。
(注4)この更正の請求の期間の延長に併せて、税務署長が増額更正を行うことができる期間について、所得税・消費税など、改正前に3年とされていたものが5年に延長されました。なお、偽り・不正の行為により税額を免れるなど脱税の場合に税務署長が行う増額更正の期間は現行のとおり7年となります。
(注5)平成23年12月2日より前に法定申告期限が到来する国税については、更正の請求ができる期間は延長されていませんが、運用上の措置として、更正の請求の期限を過ぎた課税期間であっても、増額更正ができる期間内に「更正の申出書」の提出があれば、調査によりその内容の検討をして、その課税期間につき納めすぎの税金があると認められた場合などには、減額の更正を行うことになります(申出のとおりに更正されない場合であっても、不服申立てをすることはできませ ん。)。詳しくは最寄りの税務署におたずねください。
なお、所得税(純損失等の金額に係る更正に限る。)、法人税及び贈与税については、増額の更正ができる期間を過ぎると減額の更正を行うこともできなくなるため、提出期間内に「更正の申出書」を提出された場合であっても、申出の内容等によっては当該期間内に調査により減額の更正をすべき事実を確認できず、結果として減額の更正ができないときがあります。このため、これらの税目に係る「更正の申出書」については、調査等に要する時間を考慮し、期限のおおむね3か月前までには提出していただくようお願いします。
※調査等に要する時間は申出の内容等によって異なります(内容が複雑で相当の時間を要する場合や、申告書の簡易な誤りなど時間を要しない場合もあります)ので、納めすぎの税金があることなどに気付いたときは、早めに税務署にご相談ください。
更正の請求の範囲が拡大されました
(1)当初申告要件の廃止
当初申告の際、申告書に適用金額を記載した場合に限り適用が可能とされていた措置(当初申告要件がある措置)のうち、一定の措置については、更正の請求により事後的に適用を受けることができることとされました(表1参照)。
(2)控除額の制限の見直し
控除等の金額が当初申告の際の申告書に記載された金額に限定される「控除額の制限」がある措置について、更正の請求により、 適正に計算された正当額まで当初申告時の控除等の金額を増額することができることとされました(表2参照)。
【表1:(1)当初申告要件が廃止された措置】
【所得税関係】
・給与所得者の特定支出の控除の特例
・保証債務を履行するために資産を譲渡した場合の所得計算の特例
・純損失の繰越控除
・雑損失の繰越控除
・変動所得及び臨時所得の平均課税
・外国税額控除
・資産に係る控除対象外消費税額等の必要経費算入
※平成23年12月2日の属する年分以後の所得税から適用されます。
【法人税関係】
・受取配当等の益金不算入
・外国子会社から受ける配当等の益金不算入
・国等に対する寄附金、指定寄附金及び特定公益増進法人に対する寄附金の損金算入
・会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入
・協同組合等の事業分量配当等の損金算入
・所得税額控除
・外国税額控除
・公益社団法人又は公益財団法人の寄附金の損金算入限度額の特例
・引継対象外未処理欠損金額の計算に係る特例
・特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の制限の5倍要件の判定の特例
・特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入の対象外となる資産の特例
・特定資産に係る譲渡等損失額の計算の特例
※平成23年12月2日以後に確定申告書等の提出期限が到来する法人税から適用されます。
【相続税・贈与税関係】
・配偶者に対する相続税額の軽減
・贈与税の配偶者控除
・相続税における特定贈与財産の控除
※平成23年12月2日以後に申告書の提出期限が到来する相続税又は贈与税から適用されます。
【表2:(2)控除額の制限が見直された措置】
【所得税関係】
・外国税額控除
・試験研究を行った場合の所得税額の特別控除
・試験研究を行った場合の所得税額の特別控除の特例
・エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の所得税額の特別控除
・中小企業者が機械等を取得した場合の所得税額の特別控除
・沖縄の特定中小企業者が経営革新設備等を取得した場合の所得税額の特別控除
・雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除
・所得税の額から控除される特別控除額の特例
・青色申告特別控除(65万円)
・電子証明書を有する個人の電子情報処理組織による申告に係る所得税額の特別控除
※平成23年12月2日の属する年分以後の所得税から適用されます。
【法人税関係】
・受取配当等の益金不算入
・外国子会社から受ける配当等の益金不算入
・国等に対する寄附金、指定寄附金及び特定公益増進法人に対する寄附金の損金算入
・所得税額控除
・外国税額控除
・試験研究を行った場合の法人税額の特別控除
・試験研究を行った場合の法人税額の特別控除の特例
・エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の法人税額の特別控除
・中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除
・沖縄の特定中小企業者が経営革新設備等を取得した場合の法人税額の特別控除
・法人税の額から控除される特別控除額の特例
・沖縄の特定地域において工業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除
・国際戦略総合特別区域において機械等を取得した場合の法人税額の特別控除
・雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除
※平成23年12月2日以後に確定申告書等の提出期限が到来する法人税から適用されます。
その他
○平成24年2月2日以後に行う更正の請求について適用されます。
「事実を証明する書類」の添付義務の明確化
更正の請求に際しては、更正の請求の理由の基礎となる「事実を証明する書類」の添付が必要となることが明確化されました。
偽りの記載をして更正の請求書を提出した者に対する罰則の創設
偽りの記載をして更正の請求書を提出した者に対する罰則(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)が設けられました。
以下は、各税目に係る「更正の申出書」様式となりますが、ページ容量縮減のため縮小した様式を掲載しております。また、相続税及び贈与税の「更正の申出書」には、次葉や付表も使用することになりますが、当該様式は割愛しております。