消費税法令の改正について 平成24年8月税制改正ほか 大阪府高槻市の松本寿一税理士事務所

消費税法令の改正について 平成24年8月税制改正ほか

消費税法改正の状況

本稿は、国税庁作成パンフレット「消費税法改正等のお知らせ 平成25年11月(平成27年4月改訂)」を基に記述しております。改正事項の項目は次のとおりとなります。

Ⅰ 「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」による消費税法の主な改正内容
Ⅱ 消費税転嫁対策特別措置法に規定する「総額表示義務の特例措置」 (掲載省略)
Ⅲ 課税標準額に対する消費税額の計算の特例に関する経過措置の改正

Ⅰ 「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」による消費税法の主な改正内容

1 消費税収入の使途の明確化

国分の消費税収入については、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費(社会保障4経費)に充てるものとされました。
(注) 地方消費税収入(引上げ分)及び消費税収入に係る地方交付税分については、社会保障4経費を含む社会保障施策に要する経費に充てるものとされています。

2 消費税率の引上げ

消費税率及び地方消費税率について、次のとおり2段階で引き上げることとされました。

消費税の税率の推移 新税率以後も一定のものは軽減税率(現行税率)を適用
~平成26年3月 平成26年4月~31年9月 平成31年10月
合計 5% 8% 10%
内消費税率 4% 6.3% 7.8%
内地方消費税率 1% 1.7% 2.2%

※ 引上げ後の税率は、経過措置(「5 税率引上げに伴う経過措置」参照)が適用されるものを除き、適用開始日以後に行われる資産の譲渡等について適用されます。
消費税率の引上げ時期は、平成27年10月1日から平成29年4月1日に変更されました。

3 特定新規設立法人の事業者免税点制度の不適用制度の創設

その事業年度の基準期間(注)がない法人で、その事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1,000万円未満の法人(新規設立法人)のうち、次の①、②のいずれにも該当するもの(特定新規設立法人)については、当該特定新規設立法人の基準期間のない事業年度に含まれる各課税期間における課税資産の譲渡等について、納税義務が免除されないこととなりました。
(注) 「基準期間」とは、原則として、その事業年度の前々事業年度をいいます。

①その基準期間がない事業年度開始の日において、他の者により当該新規設立法人の株式等の50%超を直接又は間接に保有される場合など、他の者により当該新規設立法人が支配される一定の場合(特定要件)に該当すること。

②上記①の特定要件に該当するかどうかの判定の基礎となった他の者及び当該他の者と一定の特殊な関係にある法人のうちいずれかの者(判定対象者)の当該新規設立法人の当該事業年度の基準期間に相当する期間(基準期間相当期間)における課税売上高が5億円を超えていること。

【適用開始時期】
平成26年4月1日以後に設立される新規設立法人で、特定新規設立法人に該当するものについて適用されます。

4 任意の中間申告制度の創設

直前の課税期間の確定消費税額(地方消費税額を含まない年税額)が48万円以下の事業者(中間申告義務のない事業者)が、任意に中間申告書(年1回)を提出する旨を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に提出した場合には、当該届出書を提出した日以後にその末日が最初に到来する6月中間申告対象期間(注1)から、自主的に中間申告・納付(注2)することができることとされました。

(注1) 「6月中間申告対象期間」とは、その課税期間開始の日以後6月の期間で、年1回の中間申告の対象となる期間をいいます。
(注2) 中間納付税額は、直前の課税期間の確定消費税額の1/2の額となります。また、中間納付税額と併せて地方消費税の中間納付税額を納付することとなります。なお、任意の中間申告制度を適用する場合であっても、仮決算を行って計算した消費税額及び地方消費税額により中間申告・納付することができます。

【適用開始時期】
個人事業者の場合には平成27年分から、また、事業年度が1年の法人については、平成26年4月1日以後開始する課税期間(平成27年3月末決算分)から適用されます。

留意事項

○ 任意の中間申告制度を適用した場合、6月中間申告対象期間の末日の翌日から2月以内に、所定の事項を記載した中間申告書を納税地の所轄税務署長に提出するとともに、その申告に係る消費税額及び地方消費税額を併せて納付する必要があります。
 ※ 期限までに納付されない場合には、延滞税が課される場合があります。
 ○ 中間申告書をその提出期限までに提出しなかった場合には、6月中間申告対象期間の末日に、任意の中間申告制度の適用をやめようとする旨を記載した届出書の提出があったものとみなされます。
 ※ 直前の課税期間の確定消費税額が48万円超の事業者(中間申告義務のある事業者)が中間申告書をその提出期限までに提出しない場合には、中間申告書の提出があったものとみなすこととされていますが、任意の中間申告制度の場合、中間申告書の提出があったものとみなされません(中間納付することができないこととなります。)。

5 税率引上げに伴う経過措置

改正後の税率は、適用開始日以後に行われる資産の譲渡等、課税仕入れ及び保税地域から引き取られる課税貨物に係る消費税について適用され、適用開始日前に行われた資産の譲渡等、課税仕入れ及び保税地域から引き取られる課税貨物に係る消費税については、改正前の税率が適用されることとなります(「2 消費税率の引上げ」参照)。
 ただし、適用開始日以後に行われる資産の譲渡等のうち一定のものについては、改正前の税率を適用することとするなどの経過措置が講じられています。

○ 次に掲げるものには、8%への税率引上げ後においても改正前の税率(5%)が適用されます。

経過措置の内容
①旅客運賃等
平成26年4月1日以後に行う旅客運送の対価や映画・演劇を催す場所、競馬場、競輪場、美術館、遊園地等への入場料金等のうち、平成26年4月1日前に領収しているもの
経過措置(旅客運賃等)
②電気料金等
継続供給契約に基づき、平成26年4月1日前から継続して供給している電気、ガス、水道、電話に係る料金等で、平成26年4月1日から平成26年4月30日までの間に料金の支払いを受ける権利が確定するもの
経過措置(電気料金等)
③請負工事等
平成8年10月1日から平成25年9月30日までの間に締結した工事(製造を含みます。)に係る請負契約(一定の要件に該当する測量、設計及びソフトウエアの開発等に係る請負契約を含みます。)に基づき、平成26年4月1日以後に課税資産の譲渡等を行う場合における、当該課税資産の譲渡等
経過措置(請負工事等)
④資産の貸付け
平成8年10月1日から平成25年9月30日までの間に締結した資産の貸付けに係る契約に基づき、平成26年4月1日前から同日以後引き続き貸付けを行っている場合(一定の要件に該当するものに限ります。)における、平成26年4月1日以後に行う当該資産の貸付け
経過措置(資産の貸付け)
⑤指定役務の提供
平成8年10月1日から平成25年9月30日までの間に締結した役務の提供に係る契約で当該契約の性質上役務の提供の時期をあらかじめ定めることができないもので、当該役務の提供に先立って対価の全部又は一部が分割で支払われる契約(割賦販売法に規定する前払式特定取引に係る契約のうち、指定役務の提供(*)に係るものをいいます。)に基づき、平成26年4月1日以後に当該役務の提供を行う場合において、当該契約の内容が一定の要件に該当する役務の提供 * 「指定役務の提供」とは、冠婚葬祭のための施設の提供その他の便益の提供に係る役務の提供をいいます。
経過措置(指定役務の提供)
⑥予約販売に係る書籍等
平成25年10月1日前に締結した不特定多数の者に対する定期継続供給契約に基づき譲渡される書籍その他の物品に係る対価を平成26年4月1日前に領収している場合で、その譲渡が平成26年4月1日以後に行われるもの
経過措置(予約販売に係る書籍等)
⑦特定新聞
不特定多数の者に週、月その他の一定の期間を周期として定期的に発行される新聞で、発行者が指定する発売日が平成26年4月1日前であるもののうち、その譲渡が平成26年4月1日以後に行われるもの ※平成25年10月30日政令304号により、雑誌は、経過措置の対象から除かれました。
経過措置(特定新聞)
⑧通信販売
通信販売の方法により商品を販売する事業者が、平成25年10月1日前にその販売価格等の条件を提示し、又は提示する準備を完了した場合において、平成26年4月1日前に申込みを受け、提示した条件に従って平成26年4月1日以後に行われる商品の販売
経過措置(通信販売)
⑨有料老人ホーム
平成8年10月1日から平成25年9月30日までの間に締結した有料老人ホームに係る終身入居契約(入居期間中の介護料金が入居一時金として支払われるなど一定の要件を満たすものに限ります。)に基づき、平成26年4月1日前から同日以後引き続き介護に係る役務の提供を行っている場合における、平成26年4月1日以後に行われる当該入居一時金に対応する役務の提供
経過措置(有料老人ホーム)

Ⅲ 課税標準額に対する消費税額の計算の特例に関する経過措置の改正

平成26年4月1日以後に行われる総額表示義務の対象となる取引について、総額表示を行っている場合において、その取引に係る決済上受領すべき金額を税込価格を基礎として計算することができなかったことにつきやむを得ない事情があるときは、経過措置として、当分の間、旧消費税法施行規則第22条第1項(注)の規定を適用できることとされました。
 また、上記Ⅱの総額表示義務の特例措置の適用を受ける場合にも、総額表示を行っているものとして、この経過措置の適用を受けることができることとされました。
(注) 消費税法施行規則の一部を改正する省令(平成15年9月30日財令第92号)により、廃止された消費税法施行規則第22条第1項をいいます。

【適用開始時期】
平成26年4月1日以後に行う課税資産の譲渡等から適用されます。