平成23年度税制改正により、定率法の償却率が見直され、近年の改正と併せ、償却資産の保有状態によっては定率法の計算は3種類の方法が混在することになります。
時期別 | 平成19年3月31日以前 | 平成19年4月1日から平成23年3月31日 | 平成24年4月1日から |
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償却方法 | 旧定率法 | 250%定率法 | 200%定率法 |
平成23年度改正前の定率法の償却制度
計算式で表しますと、期首帳簿価額 × 償却率 = 償却限度額で求められ、
期首帳簿価額とは、取得価額から既にした償却の額で損金の額に算入された累積額を控除した金額であり、償却率は、償却費が毎年一定の割合で逓減する250%定率法を乗じて計算した金額を事業年度の償却限度額する方法です。
(資産の耐用年数に応じ定額法の償却率を2.5倍した償却率)
取得価額 | 期首帳簿価額 | 償却率 | 2年目償却限度額 |
---|---|---|---|
1,000,000 | 750,000 | 0.25 | 187,500 |
上記により計算した償却限度額(調整前償却額)が、当該資産の取得価額に耐用年数に応じて定められた「保証率」を乗じて計算した「償却保証額」に満たないこととなる場合には、その満たないこととなる事業年度の期首帳簿価額(改定取得価額)に、その償却費がその後毎年同一となるように当該資産の耐用年数に応じて定められた「改定償却率」を乗じて計算した金額を各事業年度の償却限度額として、残存簿価1円となるまで償却を行う方法でした。
償却限度額(調整前償却額) < 償却保証額となる場合は、期首帳簿価額(改定取得価額) × 改定償却率 = 償却限度額の計算方法に切り替える方式が採用されています。
取得価額 | 期首帳簿価額 | 償却率 | 償却限度額 | 償却保証額 | 改訂取得価額×改訂償却率 | 8年目償却限度額 |
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1,000,000 | 133,485 | 0.25 | 33,371 | 44,480 | 133,485×0.334= | 44,583 |
上記例示(改正前250%定率法) 耐用年数10年、償却率0.25、保証率0.04448、改訂償却率0.334 減価償却資産に係る償却率などは旧耐用年数省令別表第八に掲載されています。
年数 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 | 7年目 | 8年目 | 9年目 | 10年目 |
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期首帳簿価額 | 1,000,000 | 750,000 | 562,500 | 421,875 | 316,407 | 237,306 | 177,980 | 133,485 | 88,902 | 44,319 |
調整前償却額 | 250,000 | 187,500 | 140,625 | 105,468 | 79,101 | 59,326 | 44,495 | 33,371 | ||
償却保証額 | 44,480 | 44,480 | 44,480 | 44,480 | 44,480 | 44,480 | 44,480 | 44,480 | ||
改定取得価額 ×改定償却率 |
44,583 | 44,583 | (44,583) | |||||||
償却限度額 | 250,000 | 187,500 | 140,625 | 105,468 | 79,101 | 59,326 | 44,495 | 44,583 | 44,583 | 44,318 |
期末帳簿価額 | 750,000 | 562,500 | 421,875 | 316,407 | 237,306 | 177,980 | 133,485 | 88,902 | 44,319 | 1 |
平成23年度改正後の定率法の償却制度
(1)200%定率法の導入
計算方法は改正前と同様ですが、平成24年4月1日以後に取得をされた減価償却資産に適用される定率法の償却率が、定額法の償却率を2倍した償却率(「200%定率法」)に引き下げられました。また、平成24年4月1日以後に取得をされた減価償却資産に適用される「保証率」及び「改定償却率」についても、200%定率法の「償却率」の改正に合わせて見直されました。
取得価額 | 期首帳簿価額 | 償却率 | 2年目償却限度額 |
---|---|---|---|
1,000,000 | 800,000 | 0.2 | 160,000 |
償却計算初期(2年目)は、上記のように計算され、やがて保証率を乗じて計算した償却保証額に満たない年度となる場合(7年目)は、下記のように改訂取得価額に改訂償却率を乗じて計算した金額を償却限度額とする事となります。
取得価額 | 期首帳簿価額 | 償却率 | 償却限度額 | 償却保証額 | 改訂取得価額×改訂償却率 | 7年目償却限度額 |
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1,000,000 | 262,144 | 0.2 | 52,428 | 65,520 | 262,144×0.250= | 65,536 |
上記例示(改正後200%定率法) 耐用年数10年、償却率0.20、保証率0.06552、改訂償却率0.250 減価償却資産に係る償却率などは耐用年数省令別表第十に掲載されています。
年数 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 | 7年目 | 8年目 | 9年目 | 10年目 |
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期首帳簿価額 | 1,000,000 | 800,000 | 640,000 | 512,000 | 409,600 | 327,680 | 262,144 | 196,608 | 131,072 | 65,536 |
調整前償却額 | 200,000 | 160,000 | 128,000 | 102,400 | 81,920 | 65,536 | 52,428 | |||
償却保証額 | 65,520 | 65,520 | 65,520 | 65,520 | 65,520 | 65,520 | 65,520 | |||
改定取得価額 ×改定償却率 |
65,536 | 65,536 | 65,536 | (65,536) | ||||||
償却限度額 | 200,000 | 160,000 | 128,000 | 102,400 | 81,920 | 65,536 | 65,536 | 65,536 | 65,536 | 65,535 |
期末帳簿価額 | 800,000 | 640,000 | 512,000 | 409,600 | 327,680 | 262,144 | 196,608 | 131,072 | 65,536 | 1 |
この改正により、次の2点の経過措置が設けられています。この経過措置は、上記のように償却方法の異なるものが混在するための事務負担の軽減と説明されています。
(2)改正事業年度の平成24年4月1日以後に取得をされた減価償却資産の250%定率法の適用
平成24年4月1日前に開始し、かつ、同日以後に終了する事業年度(「改正事業年度」)においてその有する減価償却資産の償却方法として定率法を選定している法人が、同日からその事業年度終了の日までの期間内に減価償却資産を取得する場合には、その減価償却資産を平成24年3月31日以前に取得をされたものとみなして、250%定率法により償却することができるとされています。
具体的には、3月決算法人以外の法人が対象で、4月1日以後取得した償却資産を、適用時期以前に取得されたものとみなす経過措置ですが、届出書などの提出は要しません。
時期別 | 前事業年度 | 改正事業年度 | 翌事業年度 |
償却方法 | 250%定率法 | 4/1以後原則は200%定率法 選択で250%定率法適用可能 |
200%定率法 |
(3)平成19年4月1日から平成24年3月31日までの間に取得をされた減価償却資産の200%定率法の適用
これも事務負担軽減のための措置で、前回法改正後に取得された250%定率法適用減価償却資産を「届出書」の提出により200%定率法にて償却することができる、統一できるというものです。
●適用資産・・・平成19年4月1日から平成24年3月31日までの間に取得をされた減価償却資産につき250%定率法を選定している場合
●届出書の提出・・・平成24年4月1日の属する事業年度の確定申告書の提出期限(仮決算をした場合の中間申告書を提出する場合には、その中間申告書の提出期限)までに一定の事項を記載した届出書を所轄税務署長に提出
●変更事業年度・・・改正事業年度又は平成24年4月1日以後最初に開始する事業年度のいずれかの事業年度(「変更事業年度」。)以後の各事業年度の償却限度額の計算については、その減価償却資産の全てを平成24年4月1日以後に取得をされたものとみなして200%定率法により償却することができるとされています。
届出書の様式につきましては、別稿、減価償却資産の償却の方法等に関する経過措置の適用を受ける旨の届出書(法人税用)を参照下さい。
また、経過年数表はこちらに掲載しております。
ただ、250%定率法適用資産を償却率の低い200%定率法に変更することになり、何らかの調整を行わなければ耐用年数にて償却計算(備忘価額1円)が終了しません。そのため、次の作業が必要となります。
この特例の適用を受ける減価償却資産の耐用年数は、その減価償却資産の法定耐用年数及び未償却割合に対応する改正耐用年数省令附則別表(経過年数表)に定める経過年数を、その減価償却資産の法定耐用年数から控除した年数によることとされています。
また、この耐用年数により償却保証額を計算する場合の減価償却資産の取得価額は、その減価償却資産の取得価額から変更事業年度の前事業年度までの各事業年度においてした償却の額の累積額を控除した金額となります。
変更事業年度において調整前償却額が償却保証額に満たない資産など一定のものは除かれます。
【未償却割合】 (減価償却資産の取得価額 - 変更事業年度の前事業年度までの各事業年度においてした償却の額の累積額) ÷ (減価償却資産の取得価額)
●適用時期 平成24年4月1日以後に終了する事業年度の償却限度額の計算について適用されます。
なお、本稿で取り上げておりますのは改正事項の一部のみであり、本改正につきましては、国税庁より「平成23年12月改正 法人の減価償却制度の改正に関するQ&A」が公開されております。実務の参考になろうかと思われます。
平成19年度税制改正により使用されることとなった定率法に関する語句説明
調整前償却額とは =償却限度額のことで、減価償却資産の取得価額に、その償却費が毎年一定の割合で逓減するように当該資産の耐用年数に応じた「定率法の償却率」を乗じて計算した金額。今までと同様、通常に計算を続けた償却計算
償却保証額とは 減価償却資産の取得価額に保証率を乗じた金額で、各事業年度の償却費の金額は、この金額を下回らないよう規定されている。
保証率とは 耐用年数省令別表第十に規定される率
改定取得価額とは 取得価額から償却累積額を控除した後の金額で調整前償却額 < 償却保証額 となった時点の価額
改定償却率とは 耐用年数省令別表第十に規定される率で調整前償却額 < 償却保証額 となった時点から改定取得価額の金額にこの率を乗じることになります。