引当金制度

引当金制度の概要

法人税の所得金額の計算上、損金の額に算入される金額は、償却費の金額を除き、その事業年度終了の日までに債務の確定したものに限られ(法22③)、将来発生が予測される費用や損失を見積もって、損金の額に算入することは認められません。

一方、企業会計では、将来その発生が確実に起ると予測され、しかもその起因となる事実が、その事業年度以前にあると認められる特定の費用又は損失については、これをあらかじめ見積もって各会計期間に割り当て、引当金として計上することが会計慣行であり、税務上もこれを認めることが適正な課税所得の計算上必要であると考えられます。

そこで、法人税法では、このような企業会計の実情を考慮して、別段の定めによって貸倒引当金(法52)、返品調整引当金(法53)、退職給与引当金、賞与引当金、特別修繕引当金及び製品保証引当金の6種類の引当金を設け、一定限度内の繰入額を損金の額に算入することが認められてきました。

ただ、税法にある引当金制度も、平成10年度の税制改正により引当金関係の大幅な改正が行われ、賞与引当金、特別修繕引当金及び製品保証等引当金については、経過措置を付して制度が廃止され、貸倒引当金については、制度の改正が行われ、退職給与引当金については、平成14年度の税制改正により経過措置を付して制度が廃止されています。

各種引当金の沿革平成10年度税制改正平成14年度税制改正現在
貸倒引当金制度改正-下記参照ください
返品調整引当金--割愛させて頂きます
退職給与引当金-廃止(経過措置あり)下記参照ください
賞与引当金廃止(経過措置あり)--
特別修繕引当金廃止(経過措置あり)--
製品保証引当金廃止(経過措置あり)--

【参考】準備金
 租税特別措置法には、引当金と同様に各事業年度において一定限度内の繰入額を損金の額に算入する準備金の規定がありますが、準備金は引当金と異なり、その事業年度の収益と明確な対応関係を持っているものは少なく、むしろ偶発的な損失の引当てや政策的な色彩があります。(措55〜57の8、58、61の2)

引当金と準備金の一般的な相違点は次のとおり
① 引当金の繰入れは白色申告法人でも認められるが、準備金の積立ては青色申告法人に限られる。
② 引当金の繰入れは損金経理が必要であるが、準備金の積立ては損金経理によるほか、剰余金の処分によって積み立てることもできる。この場合は、その積み立てた金額は申告書別表四で減算することとなる。
③ いずれも繰入額、積立額の損金算入に関する明細の記載を要するが、この記載がない場合でも、引当金についてはいわゆるゆうじょ規定があるのに対し、準備金についてはゆうじょ規定はない。


貸倒引当金

商品などの販売やサービスの提供により、法人が取得する売掛金や受取手形等の債権は、すべて確実に回収されるわけではなく、得意先の倒産・その他の原因で貸倒れとなる危険性もあります。

現在、貸倒れとなっていない売掛金等の債権であっても、将来貸倒れが発生するおそれがあり、そのための損失を見込んであらかじめ準備をしておくため、
 企業会計では、将来発生が予測される貸倒れの額として、決算期末において法人が有する売掛金等の債権に対し、過去の経験則による一定の率を乗じた金額を貸倒引当金勘定に繰り入れることとされています。

この場合、どの程度の回収不能額が発生するかの予測は困難であり、この回収不能見込額を法人の判断に任せることは恣意的に判断されることも考えられ、

そこで法人税法は、法人が有する金銭債権の貸倒れその他これに類する事由による損失の見込み額として、損金経理により貸倒引当金勘定に繰り入れた金額については、一定の繰入限度額の範囲内でその損金算入を認めることとされています(法52①②)。

なお、平成10年税制改正により、貸倒引当金の繰入限度額の計算にあたって、原則として法定繰入率が廃止(中小企業等を除く。) されています。

【参考】貸倒損失
 貸倒れについては、貸倒れ計上の時期を法人個々の判断にゆだねると、課税上公平性を欠くことになるため、次のような一定の事実が生じた日の属する事業年度において損金算入が認められています。

① 金銭債権の全部又は一部を切り捨てた場合(法律上の貸倒れ、基通9-6-1)
 イ 金銭債権のうち会社更生法等の法令の規定や関係者の協議決定等により切り捨てられることとなった金額
 ロ 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、金銭債権の弁済を受けることができない場合に、その債務者に対し書面により債務免除をした金額

②回収不能の場合(事実上の貸倒れ、基通9-6-2)
債務者の資産状況、支払能力等からみて金銭債権の全額が回収できないことが明らかになった場合の、その債権の全額を貸倒れとして損金経理した金額

③ 一定期間取引停止後弁済がない場合等(形式上の貸倒れ、基通9-6-3)
債務者との取引を停止した時以後1年を経過した場合等の、その債務者に対して持っている売掛債権(備忘価額を控除した後の金額)を損金経理した金額

貸倒引当金の繰入限度額は

個別評価金銭債権によるものと一括評価金銭債権によるものに区分され、各々法人税申告書別表によりその金額の計算を行うことになります。

【参考】平成27年度法人税申告書27 (個別評価)別表十一(一)27 (一括評価)別表十一(一の二)
【参考】平成26年度法人税申告書26 (個別評価)別表十一(一)26 (一括評価)別表十一(一の二)
【参考】平成25年度法人税申告書25 (個別評価)別表十一(一)25 (一括評価)別表十一(一の二)
【参考】平成24年度法人税申告書24 (個別評価)別表十一(一)24 (一括評価)別表十一(一の二)
【参考】平成23年度法人税申告書23 (個別評価)別表十一(一)23 (一括評価)別表十一(一の二)
【参考】平成22年度法人税申告書22 (個別評価)別表十一(一)22 (一括評価)別表十一(一の二)
【参考】平成21年度法人税申告書21 (個別評価)別表十一(一)21 (一括評価)別表十一(一の二)
【参考】平成20年度法人税申告書20 (個別評価)別表十一(一)20 (一括評価)別表十一(一の二)
【参考】平成19年度法人税申告書19 (個別評価)別表十一(一)19 (一括評価)別表十一(一の二)
【参考】平成18年度法人税申告書18 (個別評価)別表十一(一)18 (一括評価)別表十一(一の二)

1 個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額

事業年度末において、その一部について貸倒れその他これに類する事由による損失が見込まれる金銭債権に係る繰入限度額は、次の①から④の場合に応じ、その金銭債権の債務者ごとに繰入限度額を計算することとされていますが、

この個別評価の対象となる債権には、売掛金、貸付金その他これらに類する金銭債権のほか、保証金や前渡金等について返還請求を行った場合におけるその返還請求権も含まれます。
 ① 長期棚上債権
 ② 債務超過等の事由により回収見込みのない金銭債権
 ③ 形式基準によるもの
 ④ 外国政府等に対する金銭債権

繰入事由及び繰入限度額については、法人税法施行令第96条に掲げられています。

2 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額

一括評価金銭債権の範囲

一括評価金銭債権とは、法人がその事業年度終了のときに有する売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権(上記1、個別評価に掲げる金額の算定の基礎となったものを除く)をいい。この一括評価金銭債権には、売掛金、貸付金の債権について取得した受取手形も含まれるほか、その受取手形を割引き、又は裏書譲渡した場合にも決済が完了するまではその対象となります。

しかし、資産の取得や役務の提供を受けるために支出した手付金、前渡金、保証金等の債権及び将来精算される費用の前払いとして支出された前払給料、仮払旅費等一時的に仮払金、立替金等として経理されている金額は該当しません。

繰入限度額の計算 (貸倒実績率か中小企業等の場合の法定繰入率か)

一括評価金銭債権に係る繰入限度額の計算は、次の算式(令96②)。
その事業年度終了時の一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額 × ①貸倒実績率 = 繰入限度額

①貸倒実績率 貸倒実績率は、次の算式によって算出した割合(過去3年間の平均貸倒率)(令96②)。

貸倒実績率(小数点以下4位未満切上げ)=下記の分子÷分母

分子・・・(その事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度の売掛債権等の貸倒損失の額+個別評価分の引当金繰入額−個別評価分の引当金戻入額)×12÷左の各事業年度の合計月数

分母・・・(その事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度終了の時における−括評価金銭債権の帳簿価額の合計額)÷左の各事業年度の数

②中小企業等の貸倒引当金の特例

中小企業等の貸倒引当金の特例制度の対象法人(資本金1億円以下の普通法人又は公益法人等若しくは協同組合等など)については、租税特別措置として引き続き、法定繰入率による繰入れも認められています(措法57の10①、措令33の9④)。

(期末の一括評価金銭債権の帳簿価額−実質的に債権とみられないもの額)×法定繰入率=中小企業等の繰入限度額

法定繰入率
卸売・小売業(飲食店料理店を含む)10/1,000
製造業8/1,000
金融・保険業3/1,000
割賦販売小売業・同斡旋業13/1,000
その他6/1,000

退職給与引当金

法人税法では、退職給与規程を定めている法人がその使用人の退職給与に充てるため、一定の繰入限度額までの金額を損金経理により退職給与引当金勘定に繰り入れた場合には、その損金算入が認められたていましたが(旧法54)、
 平成14年度の税制改正により経過措置を残しながら、この制度は廃止されました。

これにより法人が、廃止前の退職給与引当金勘定の金額を有している場合には、その金額を今後4年間(中小企業等にあっては、10年間)で取り崩していくことになります(平14改正法附則8②④)。

退職給与引当金残高の取崩

法人が、改正事業年度(注)の開始の時(期首)において、退職給与引当金勘定の金額を有している場合には、その金額をそれぞれ次の区分に応じて取り崩したうえ、その年度の益金に算入する必要があるものとされています(平14改正法附則8②④)。
 (注)改正事業年度とは、平成15年3月31日以後最初に終了する事業年度をいいます。

この退職給与引当金勘定の金額の取崩額の計算に使用する様式が、法人税別表十一(三)となります。

【参考】平成25年度法人税申告書25 退職給与引当金の益金算入に関する明細書
【参考】平成24年度法人税申告書24 退職給与引当金の益金算入に関する明細書
【参考】平成23年度法人税申告書23 退職給与引当金の益金算入に関する明細書
【参考】平成22年度法人税申告書22 退職給与引当金の益金算入に関する明細書
【参考】平成21年度法人税申告書21 退職給与引当金の益金算入に関する明細書
【参考】平成20年度法人税申告書20 退職給与引当金の益金算入に関する明細書
【参考】平成19年度法人税申告書19 退職給与引当金の益金算入に関する明細書
【参考】平成18年度法人税申告書18 退職給与引当金の益金算入に関する明細書
法人の区分事業年度取崩金額
改正事業年度終了の時の資本の金額又は出資金額が1億円を超える普通法人等平成14年4月1日から平成16年3 月31日までの間に開始する事業年度 退職給与引当金勘定の金額×3/10
×その事業年度の月数/12
平成16年4月1日から平成17年3 月31日までの間に開始する事業年度退職給与引当金勘定の金額×2/10
×その事業年度の月数/12
平成17年4月1日以後に開始する事業年度で改正事業年度開始の日以後4年を経過した日の前日の属する事業年度までの事業年度 退職給与引当金勘定の金額×2/10
×その事業年度の月数/12
(注)改定事業年度開始の日以後4年を経過した日の前日の属する事業年度には、残高のすべてを取り崩すことになる。
上記以外の法人改正事業年度から、改正事業年度開始の日以後10年を経過した日の前日の属する事業年度での各事業年度退職給与引当金勘定の金額
×各事業年度の月数/120
(注)改定事業年度開始の日以後10年を経過した日の前日の属する事業年度には、残高のすべてを取り崩すことになる。

(注)この取崩しを行った後の退職給与引当金勘定の金額が、期末退職給与の要支給額の合計額を超えるときは、その超える部分の金額も取り崩す必要がある(平14改正法附則8③)。

○旧退職給与引当金制度
 労働協約等で退職給与を支給することが定められている場合、法人は使用人の退職に際して退職給与の支払義務を負っていることになりますが、この退職給与を支払時の一時の費用とすることは、その期にのみ多額の費用を計上することとなり、正確な期間損益計算の見地からみて適当でない。したがって、この退職給与は使用人の在職中の各期間に割り当て費用に計上することが必要であるという考えから

法人税法においても、退職給与規定を定めている法人は、その使用人の退職により支給する退職給与に充てるため、一定の繰入限度額までの金額を損金経理したときは、その繰入額を損金の額に算入することとされていました。(使用人兼務役員については引当ては不可(旧法54①))。

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最終更新 平成21年4月

法人税